「退職したら旅行でも」そう考えていた妻に告げられたこと
「これからは、別々に暮らしたいと思ってる」
65歳の夫・孝志さん(仮名)からそう告げられたとき、63歳の由美子さん(仮名)は、何を言われたのかすぐには理解できなかったといいます。
夫婦は結婚して36年。2人の子どもはすでに独立しています。
孝志さんは大学卒業後から同じメーカーに勤務。65歳で退職し、長い会社員生活を終えました。
退職給付は約2,300万円。住宅ローンも数年前に完済しています。
由美子さんは、これから夫婦で過ごす時間が増えると思っていました。
「退職したら、平日に旅行できるね」
そんな話もしていたそうです。ところが、退職して間もないある夜、夫から離婚を切り出されたのです。
「何か不満があるなら直すから」
由美子さんがそう言うと、孝志さんは首を振りました。
「何か一つが嫌だったわけじゃない。これから先まで、今と同じ生活を続けるのかと考えたら、違うと思った」
浮気や借金といった明確なきっかけがあったわけではありません。
孝志さんによれば、離婚を考え始めたのは数年前。子どもが独立し、自分の退職が近づくにつれ、「仕事をしなくなった後、どう暮らしたいのか」を考えるようになったといいます。
由美子さんには、それがかえって理解できませんでした。
「36年一緒にいたのに、退職した途端に『これからは別々に』なんて。私は、これからが夫婦の時間だと思っていたんです」
長期間連れ添った後に離婚する夫婦も一定数います。厚生労働省『令和6年人口動態統計』によると、2024年に離婚した夫婦のうち、同居期間20年以上だったケースは4万353件。内訳は20~25年が1万7,789件、25~30年が1万796件、30~35年が6,261件、35年以上が5,507件でした。
由美子さん夫婦も、その「35年以上」に当たります。
「私、これからどうやって暮らすんだろう」
夫婦としての生活が終わることと同時に、それまで2人分として考えていた老後のお金を、一人分として組み直す必要が出てきたのです。
