「年金だけで大丈夫?」息子が心配していた母の暮らし
「母さん、毎月ちゃんと足りてる?」
長男の健一さん(仮名・45歳)は、母の洋子さん(仮名・72歳)に何度かそう尋ねたことがあります。
洋子さんは夫を8年前に亡くし、一人暮らし。現在受け取っている年金は月約7万円です。
若いころに結婚し、子育て期間中は専業主婦。その後はスーパーや飲食店などでパートとして働いてきましたが、厚生年金への加入期間は長くありません。そのため、自身の老齢基礎年金を中心に月約7万円を受け取っています。
預貯金は約1,000万円。住宅ローンを完済したマンションに住んでいるとはいえ、健一さんには、母が月7万円でどう生活しているのか気になっていました。
「足りなかったら言ってよ。俺も少しなら出せるから」
「大丈夫よ。まだ働いてるから」
母が仕事をしていることは知っていました。
洋子さんは60代から、マンションやオフィスビルの清掃を請け負う会社で働いています。70歳を過ぎてから勤務日数を減らしたと聞いていたため、健一さんは月に数万円程度の収入だと思っていました。
ところがある日、帰省した健一さんが、
「年金7万円で、仕事も週3日くらいだろ。貯金をかなり崩してるんじゃないの?」
と尋ねると、洋子さんは笑いました。
「何言ってるの。仕事のほうが年金より多いよ」
「え、いくらもらってるの?」
「月によるけど、9万円から10万円くらいかな」
健一さんは驚きました。
洋子さんは週3~4日、午前中を中心に働き、繁忙期には勤務日が増えることもあります。勤務先の人手不足もあり、本人が希望すれば一定の仕事が確保されていました。
年金と合わせれば、月の収入は16万~17万円ほどになります。
「72歳でそんなに働いてるとは思わなかった」
「一日中じゃないもの。朝からお昼過ぎくらいまで。それに家にずっといるよりいいのよ」
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、2024年の労働力人口比率は65~69歳で54.9%、70~74歳でも35.6%に上ります。また、65歳以上の就業者数は21年連続で前年を上回っています。70代前半でも働き続ける人は、決して珍しい存在ではありません。
さらに洋子さんから話を聞くと、健一さんが想像していた「生活のためだけに働く母」とは少し違う姿が見えてきました。
