行政指導や損害賠償も…制度を軽視する企業が負う「3つのリスク」
事例のような違法な対応を続けた場合、企業は以下のリスクを負うことになります。
1.行政指導と「企業名公表」のリスク
ユキさんが労働基準監督署や、都道府県労働局の「雇用環境・均等部」に相談した場合、会社は行政指導(是正勧告等)を受けることになります。度重なる指導に従わない場合、育児・介護休業法に基づき「企業名の公表」という厳しいペナルティが科される可能性があり、企業の社会的信用は失墜します。
2.損害賠償請求(訴訟)のリスク
ケアハラスメントによる精神的苦痛や、不当な人事権の行使(シフト変更の強要)によってユキさんが休職・退職に追い込まれた場合、会社および人事部長個人に対して慰謝料等の損害賠償を求める民事訴訟を起こされるリスクがあります。
3.優秀な人材の流出(介護離職)による経営的損失のリスク
勤続15年のユキさんのような中核人材を「介護離職」で失うことは、企業にとって損失です。新たな人材を採用し、同等のスキルになるまで育成するコストは、数百万円規模に上ります。目先のシフトの穴埋めを優先し、社員を使い捨てにする企業は、深刻な人手不足時代を生き残ることはできません。
証拠を残して労働局へ…理不尽な会社から身を守るために
ユキさんは決して「わがまま」を言っているわけではありません。法律で保障された当然の権利を主張しています。
一人で抱え込まず、まずは以下の行動を取ることをおすすめします。
・証拠を残す
人事部長との面談内容(日時、発言内容のメモ、可能であれば録音)、提出した申請書の控えなどを証拠として確保する。
・労働局へ相談する
都道府県労働局の「雇用環境・均等部」に設置されている総合労働相談コーナーへ行き、事情を説明する。労働局から会社に対して「助言・指導」や「あっせん(話し合いの仲介)」を行ってもらう制度を利用できます。
・外部の労働組合(ユニオン)や弁護士への相談
会社がどうしても態度を軟化させない場合は、法的な専門家のサポートを受けることで、会社側も適当なあしらいができなくなります。
介護は誰にでも突然降りかかる問題です。企業は「個人の問題」と突き放すのではなく、貴重な人材を失わないための「経営課題」として、介護支援制度を正しく運用する責任があります。
内海 正人
社会保険労務士法人日本中央社会保険労務士事務所 代表社員
社会保険労務士/人事コンサルタント
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