人事部長「会社に迷惑をかけるな」…介護支援制度を申請も、“わがまま”と一蹴された〈月収30万円〉45歳女性の絶望。要支援の母を支える〈ギリギリの日常〉【社労士が警告】

人事部長「会社に迷惑をかけるな」…介護支援制度を申請も、“わがまま”と一蹴された〈月収30万円〉45歳女性の絶望。要支援の母を支える〈ギリギリの日常〉【社労士が警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

働きながら家族の介護を担う「ビジネスケアラー」は現在、日本に約300万人いると言われています。政府も企業も「介護離職ゼロ」を掲げ、さまざまな支援制度を設けているはずですが、現場の実態は必ずしも理想通りではありません。本記事では、要支援の母の介護に直面した45歳女性が会社の心ない対応に追い詰められる事例をもとに、企業のケアハラスメントに潜む違法性と重大なリスクについて社会保険労務士が解説します。

「会社に迷惑をかけるな」介護を“個人のわがまま”と切り捨てる人事部長

数日後、ユキさんは人事部長との面談に呼ばれました。

 

「会社は組織で動いているんだよ。あなた一人だけ特例を認めるわけにはいかない。個人のわがままは許されないんだよね」

 

人事部長は、会社の組織体制を理由に、ユキさんの訴えを切り捨てました。

 

「わがままではありません。母の通院には車が必要で、夫の休みに合わせないと介護が成り立たないんです。会社の介護支援制度の対象になるはずですが……」

 

必死に食い下がるユキさんに対し、人事部長は、鼻で笑うようにこう言いました。

 

「お母さん、『要介護』じゃなくて『要支援』なんでしょう? 水曜日に公共交通機関で行きなさいよ」

 

母親が寝たきりではないことを理由に、バスやタクシーの利用を勧める人事部長。さらに「親の面倒を見るのは個人の問題。会社に迷惑をかけるのは筋違いだ」とまで言い放ったのです。

 

足の悪い母親を連れて、バス停まで歩き、乗り降りさせることの困難さを、この人はまったく理解していない。ユキさんは諦めからか、黙り込んでしまいました。

「外部の第三者には会わない」夫の直談判も一蹴

その夜、帰宅したユキさんから事の顛末を聞いた夫のイチロウさんは、激怒しました。

 

「『公共交通機関で行け』なんて、介護の現実を知らない人間に違いない。介護休業法を無視した会社の対応はおかしい」と憤ったイチロウさんは、自ら会社に掛け合うことを決意しました。

 

翌日、イチロウさんはユキさんの会社に電話をかけ、人事部長との面談を申し出ました。配偶者として、現在の介護の状況がどれほど切実か、そして会社の対応がどれほど妻を追い詰めているかを直接説明し、納得のいく話し合いを求めたのです。

 

しかし、人事部長からの回答は耳を疑うものでした。

 

「配偶者であっても、外部の第三者とお会いしてご説明する義務はありません」

 

シフト変更はあくまで会社と従業員間の問題であるとし、これ以上の介入をしないよう冷徹に電話を切られ、イチロウさんも唖然とするしかありませんでした。

 

「もう、辞めるしかないのかな……」

 

月収30万円という収入源を失うことは、これからの介護費用や生活費を考えると致命的です。しかし、会社から「厄介者」扱いされ、正当な制度の利用すら「わがまま」と切り捨てられたユキさんの心は、折れかけていました。

 

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