「こんなに小さく暮らせるんだ」娘が驚いた両親の現在
住み替えから1年後、仁美さんは夫婦の新居に数日間泊まりました。部屋に入って最初に感じたのは、以前の実家との違いでした。
「思ってたより狭くないね」
「二人なら十分だよ」
紀夫さんはそう答えました。
以前の戸建てでは、使っていない部屋にも家具や荷物がありました。現在は2LDKのうち一室を寝室、もう一室を紀夫さんの趣味と来客用に使っています。
収納に入らないものは増やさない。食器も普段使う分だけです。
朝になると夫婦は海沿いまで歩き、帰りにスーパーへ寄ります。以前は買い物にも車を使っていましたが、現在は日常の用事のほとんどを徒歩で済ませています。
昼食も、自宅で簡単に作ることが増えました。
一方、マンションには管理費と修繕積立金がかかります。夫婦の場合、合わせて月約3万円。戸建て時代にはなかった毎月の固定費です。
その代わり、屋根や外壁の修繕を自分たちで手配する必要はなくなりました。庭の管理もありません。
車を手放したことで、保険料や車検、ガソリン代などの支出も減っています。
国土交通省『令和5年住生活総合調査』によると、今後「住み替え意向がある」と答えた世帯は全体で21.4%。家計を主に支える人が65歳以上の夫婦世帯では10.1%でした。高齢期に実際に住み替えを考える世帯は多数派ではありません。
紀夫さん夫婦も、住み替えを誰にでも勧めるつもりはないといいます。
長く暮らした地域を離れたことで、以前の友人とは気軽に会えなくなりました。マンションの管理費も将来上がる可能性があります。
それでも二人にとっては、広い家を維持することより、歩いて生活できる環境と、管理の負担が少ない住まいのほうが今の暮らしに合っていました。
「前の家が嫌だったわけじゃないんです。でも、子どもがいたころに必要だった家と、今の二人に必要な家は違いました」
高齢期の住み替えでは、家を小さくすれば必ず暮らしやすくなるわけではありません。買い物や通院の手段、住居費、管理の負担、これまでの人間関係など、変わるものは多くあります。
今の住まいに何が余っていて、これからの生活に何が必要なのか。夫婦二人になった後の暮らしを基準に考えることで、それまでとは違った住まいの選び方が見えてくることもあります。
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