「前なら迷わず買っていたのに」スーパーで増えた迷い
スーパーの鮮魚売り場で、修一さん(仮名・74歳)は刺身のパックを手に取りました。値札を確認してしばらく眺めたあと、再び棚へ戻します。
「前だったら、このくらいなら迷わず買っていたんですけどね」
妻を5年前に亡くした修一さんは、現在一人暮らし。年金は月約18万円、預貯金は約700万円あります。住宅ローンを完済したマンションで暮らしています。
妻がいたころから魚が好きで、一人になってからも週に2回ほど刺身を買うのが楽しみでした。ところが最近は、鮮魚売り場まで来ても値段を見て諦めることが増えました。
「財布の中を見て、今日はやめておこうって棚へ戻すんです。刺身だけじゃなくて、果物なんかもそうですね」
年金収入が大きく変わったわけではありません。変わったのは、同じ金額で買えるものです。
以前は月4万円前後だった食費も、同じ感覚で肉や魚、野菜、果物を買っていると4万円台後半になる月が増えました。
そこで修一さんは、食費を「これ以上増やさない」ことを意識するようになりました。
刺身は週2回から月2~3回ほどに。牛肉より豚肉や鶏肉を選ぶことが増え、果物も毎回は買いません。総菜が欲しいときは、値引きされる夕方にスーパーへ行きます。
「昔と同じようなものをカゴに入れているつもりでも、レジに行くと『こんなにするのか』と思うことが増えました」
総務省『2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年平均』によると、2025年の総合指数は前年比3.2%上昇しました。なかでも「食料」は6.8%上昇しています。食料品の値上がりは、日々の買い物で実感しやすい負担の一つです。
修一さんの家計では、マンションの管理費と修繕積立金に月約3万円、光熱費と通信費に約2万円、医療費にも月1万円ほどかかります。さらに固定資産税や家電の買い替えなど、毎月ではない支出にも備えておかなければなりません。
預貯金が700万円あるとはいえ、修一さんは「できるだけ日々の生活費は年金の範囲で収めたい」と考えています。そのため、スーパーで値札を見る時間が以前より長くなっていきました。
