「13日に行くね」と言っていた娘から届いた連絡
「今年は何を食べたい?」
節子さん(仮名・77歳)は、長女の由佳さん(仮名・49歳)にそうLINEを送っていました。
節子さんは夫を9年前に亡くし、一人暮らし。年金は月約16万円で、住宅ローンを完済した戸建てに住んでいます。
由佳さんは夫と高校生、中学生の子どもとの4人暮らし。自宅までは車で3時間ほどかかります。
娘一家がお盆に帰省するのは毎年の恒例でした。今年も8月13日から2泊すると聞き、節子さんは1週間ほど前から準備を始めていました。
孫が好きなジュースやアイスを買い、普段は使わない客用の食器を出します。押し入れから4人分の布団を取り出し、シーツも洗いました。
「普段は一人だから、4人増えると大変なんです。でも、来るまでの準備も楽しみのうちでした」
由佳さん一家のために使うお金も、毎年ある程度見込んでいます。滞在中の食材や外食、孫への小遣いなどを合わせれば数万円になりますが、年に一度だからと節子さんは気にしていませんでした。
ところが、帰省予定日の2日前。スマートフォンに由佳さんからLINEが届きました。
「ごめん。今年のお盆は帰れない」
続けて、夫の仕事の予定が変わったことと、上の孫の部活動が入ったことが書かれていました。節子さんはしばらく画面を見ていました。
「分かったよ。また今度ね」
そう返信しましたが、本当はもう少し聞きたいことがありました。いつなら来られるのか。孫たちは残念がっているのか。
しかし、忙しい娘を困らせるような気がして、それ以上は送りませんでした。
その日の夕方、客間に入ると、すでに用意した布団が目に入りました。片づければいいだけのことです。それでも、すぐには押し入れへ戻す気になれなかったといいます。
「来られない事情は分かるんです。ただ、私は何日も前から楽しみにしていたので、急に予定だけなくなった感じがしてしまって」
内閣府『令和7年 人々のつながりに関する基礎調査』によると、孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた割合は、何らかの社会活動に参加している人で2.1%、特に参加していない人では6.5%。人とのつながりは家族だけに限らず、日常的な社会参加とも関係していることがうかがえます。
