「免許を返した後」を考えて初めて見えた暮らし
夫婦は一度、車を使わずに1週間暮らしてみることにしました。結果は、想像以上に不便でした。
スーパーへ行くには地域のコミュニティバスを利用できますが、本数は1日に数便。帰りの時間に合わせて買い物を済ませなければなりません。
タクシーを呼べば片道3,000円近くかかります。徒歩圏内には小さな商店がありますが、生鮮食品や日用品をすべて揃えることはできません。
「免許を返したら、ここで今と同じ生活をするのは難しいね」
夫婦が気になったのは、買い物だけではありません。どちらか一人になった場合です。
これまでは隆夫さんが運転できなければ和子さんが運転し、その逆もできました。しかし一人になれば、それもできなくなります。
「移住したころは60代だったから、二人とも元気でしたが……」
警察庁『運転免許統計 令和6年版』によると、2024年に運転免許を自主返納した人は全国で約42万7,000人。そのうち65歳以上が大半を占めています。高齢になれば運転を続けるかどうかを判断する時期が訪れますが、車が生活の前提になっている地域では、返納後の移動手段も同時に考えなければなりません。
現在は車を使えるため、日常生活に大きな支障はありません。ただ、75歳を一つの目安に、都市部への再移住を検討しています。
候補にしているのは、電車やバスを使いやすい郊外の駅近マンションです。スーパーや病院が徒歩圏内にあり、車がなくても生活できることを最優先にしています。
「東京の真ん中に戻りたいわけじゃないんです。歩いて生活できる場所へ戻りたいという意味なんですよ」
地方へ移住したこと自体を、夫婦は失敗だったとは考えていません。庭で野菜を育て、自然の中で過ごした6年間は、二人にとって望んでいた暮らしでした。
ただ、60代で暮らしやすかった場所が、80代でも同じように暮らしやすいとは限りません。
住まいを選ぶ際には、車を運転しなくなった場合や、一人暮らしになった場合まで想定しておくことが重要です。年齢に合わせて住む場所を変えることも、高齢期の生活を維持するための選択肢の一つです。
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