嫁からは言えなかった本音
初孫の誕生から7年が経ち、孫が小学校に入って最初の夏休み。Aさん夫婦も70代後半になり、夏に猛暑のなか都内まで行くのが体力的にもキツくなってきました。
C家に行くたびに伝えていた同居の誘いを、いつまでものらりくらりとかわすCさん夫婦に対し、Aさんははっきりと言います。
「東京まで来るのはしんどくてな。東京は暑いし人も多いし、電車も座れないし体力的にキツい。ここまで待ってやったのだから、うちで今後は一緒に暮らそう。正直いうと、ここでの暮らしはお前の負担も大きすぎると思う。Dさんにはそろそろ仕事を辞めてもらうべきだと思うし、うちなら孫ものびのび育てられる。それに……」
言葉を続けようとするAさんをCさんは遮りました。
「俺たちは父さんたちと同居する予定はない。妻も仕事を辞めるつもりはないといっている。本音では、毎年、夏にお父さんたちが来るのが経済的にも大きな負担だし、仕事と家庭の両立を頑張っている妻が疲弊してるんだよ。少し距離を置こう。お父さん、もう来ないでください」
妻の離職がもたらす損失
Aさんは「実家で同居すれば子育ても楽になり、お金もかからない」と考えていますが、現代の共働き世帯において、妻が家庭に入ることの経済的ダメージは想像以上に大きなものです。
現在46歳で年収520万円のDさんが離職し、専業主婦になった場合の損失を計算してみます。
生涯賃金の損失:約7,300万〜9,900万円
60歳の定年、または65歳の継続雇用終了までの14〜19年間、年収520万円で働き続けた場合に得られる給与収入の総額です(昇給や退職金を考慮するとさらに増額します)。
老齢年金の損失:約800万〜1,100万円
定年まで正社員として厚生年金に加入し続けた場合と、途中で専業主婦(国民年金のみ)になった場合では、65歳以降に受け取る年金額に年間約40万〜55万円の差が生じます。85歳までの20年間受給しただけでも、1,000万円前後の差となります。
合計すると、離職によって失うお金は「およそ8,000万〜1億1,000万円規模」にのぼるでしょう。
物価高や教育費の上昇が続く現代において、収入源を途中で断つことは、孫の教育資金や自分たちの老後資金を直接的に削り取ることを意味します。Cさん夫婦が共働きを維持するのは、子世代の家計を守るための絶対に必要な防衛策でもあるのです。
厚生労働省「育児介護休業法について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
三藤 桂子
合同会社ミコサポ
代表
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