パートに賞与? 出すわけないでしょう…その認識が経営リスクに。〈2026年10月〉同一労働同一賃金の新ルールとは【社労士が解説】

パートに賞与? 出すわけないでしょう…その認識が経営リスクに。〈2026年10月〉同一労働同一賃金の新ルールとは【社労士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

これまで多くの中小企業では、パートやアルバイトの従業員に賞与を支給しないことを当然としてきました。しかし、2026年10月1日、同一労働同一賃金のルールが大きく変わることで、経営者の認識も刷新が必要です。省令の改正まであと2ヵ月、「パートに賞与なし」という待遇の問題点と、見落とされがちな採用時の「新たな義務」について見ていきます。社会保険労務士の山本達矢氏が解説します。

分かれ目は「金額」ではなく「目的」

今回の改正の核心は、待遇差を判断する枠組みが具体化された点にあります。この5年間に積み重なった最高裁判決である、ハマキョウレックス事件・長澤運輸事件(平成30年6月1日)、大阪医科薬科大学事件・メトロコマース事件(令和2年10月13日)、日本郵便事件(令和2年10月15日)の考え方が、指針に取り込まれました。

 

判断は、およそ次の順序で行われます。

 

STEP 1:待遇の性質・目的を特定する

 ↓

STEP 2:目的に照らして考慮すべき事情を選ぶ

 ↓

STEP 3:差に見合った取扱いかを判断する

 

ポイントは「いくら払うか」ではなく、「その賞与は、何のために払っているのか」という点です。

 

賞与には、労務の対価の後払い・功労報償・生活費の補助・労働意欲の向上といった性質が含まれうるものですが、その目的がパート社員にも当てはまるのに「まったく支給しない」というのが、不合理と評価されやすい構図だといえます。

 

今回の改正では、退職手当・家族手当・病気休職等が独立した項目として新設・追記された点も重要です。

 

家族手当は扶養家族の生活費を補助する趣旨に照らし、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、均衡のとれた支給が必要とされました。病気休職も、契約更新が見込まれる有期雇用労働者には、正社員と同様の制度適用を検討すべきと明記されています。

【実例】シフト作成も新人教育も行う現場責任者が「賞与ゼロ」

下記は筆者が関わった相談事例です(プライバシー保護のため、一部事実関係を変更しています)。

 

ある小売業で、勤続10年のパート社員Aさんが、正社員と同じ現場責任者を任されていました。シフト作成も新人教育もAさんの担当。それでも賞与はゼロでした。ある日、Aさんから理由を尋ねられた経営者は、こう答えます。

 

「パートさんだからね。ずっとこの運用でやってきたから」

 

このひと言で、Aさんは労働局への相談に踏み切りました。経営者は後に「10年間、誰からも言われなかったので、問題ないと思っていた」と話していましたが、指摘されなかったことは、適法であることの証明にはなりません。

 

この案件は、賞与規程の見直しと一定額の支給によって収束しましたが、失われた信頼関係は簡単には戻らず、スキルも経験も豊富だったAさんは、結局退職することになりました。

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