分かれ目は「金額」ではなく「目的」
今回の改正の核心は、待遇差を判断する枠組みが具体化された点にあります。この5年間に積み重なった最高裁判決である、ハマキョウレックス事件・長澤運輸事件(平成30年6月1日)、大阪医科薬科大学事件・メトロコマース事件(令和2年10月13日)、日本郵便事件(令和2年10月15日)の考え方が、指針に取り込まれました。
判断は、およそ次の順序で行われます。
STEP 1:待遇の性質・目的を特定する
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STEP 2:目的に照らして考慮すべき事情を選ぶ
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STEP 3:差に見合った取扱いかを判断する
ポイントは「いくら払うか」ではなく、「その賞与は、何のために払っているのか」という点です。
賞与には、労務の対価の後払い・功労報償・生活費の補助・労働意欲の向上といった性質が含まれうるものですが、その目的がパート社員にも当てはまるのに「まったく支給しない」というのが、不合理と評価されやすい構図だといえます。
今回の改正では、退職手当・家族手当・病気休職等が独立した項目として新設・追記された点も重要です。
家族手当は扶養家族の生活費を補助する趣旨に照らし、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、均衡のとれた支給が必要とされました。病気休職も、契約更新が見込まれる有期雇用労働者には、正社員と同様の制度適用を検討すべきと明記されています。
【実例】シフト作成も新人教育も行う現場責任者が「賞与ゼロ」
下記は筆者が関わった相談事例です(プライバシー保護のため、一部事実関係を変更しています)。
ある小売業で、勤続10年のパート社員Aさんが、正社員と同じ現場責任者を任されていました。シフト作成も新人教育もAさんの担当。それでも賞与はゼロでした。ある日、Aさんから理由を尋ねられた経営者は、こう答えます。
「パートさんだからね。ずっとこの運用でやってきたから」
このひと言で、Aさんは労働局への相談に踏み切りました。経営者は後に「10年間、誰からも言われなかったので、問題ないと思っていた」と話していましたが、指摘されなかったことは、適法であることの証明にはなりません。
この案件は、賞与規程の見直しと一定額の支給によって収束しましたが、失われた信頼関係は簡単には戻らず、スキルも経験も豊富だったAさんは、結局退職することになりました。
