都内で暮らす長女が突然帰省…衝撃の告白
ある週末、東京のIT関連企業で働く一人娘のエリさん(26歳)が、珍しく事前連絡なしで実家に帰ってきました。
野呂さん夫婦にとって娘は自慢の存在。大学卒業後に上京し、華やかな都心のオフィスでしっかり働いていると思っていました。
しかし、この日帰ってきたエリさんの表情は暗く、妻が用意した夕食にも手をつけずに、ただ黙り込んでいます。重苦しい沈黙の末に口にしたのは、衝撃的な言葉でした。
「お父さん、お母さん、ごめんなさい……。カードの支払いが膨らんで、全部で500万円近くの借金があるの。怖くて……」
エリさんが配属されたのは、PR・広報部門。先輩や同僚は洗練された人ばかりでした。「自分だけダサいと思われるのが怖い」と、服装やメイクを整えるため、最初はカードの一括払いで買い物をしていたといいます。
1年目の手取りは24万円ほど。一般的に見れば低い収入ではありませんでした。それでも、家賃や光熱費といった支払いを考えれば、服飾費などに使える予算は限られます。
周囲には、実家通いで自由に使えるお金が多い同僚も少なくありませんでした。自分とは環境が違うとわかっていながら物欲は止まらず、カードのリボ払いを利用するように。
限度額に達すると、キャッシングや消費者金融のカードローンにまで手を出しました。最後は6枚のカードを使い分け、毎月の返済額は15万円以上に。ここ最近は、返済のためにまた借りるという、完全な自転車操業に陥っていました。
老後計画の破綻と、打ち砕かれたハワイへの夢
エリさんの話を聞き終えた野呂さんを、怒りや呆れ、そして「なぜもっと早く気づいてやれなかったのか」という後悔が襲いました。
「自分でなんとかしなさい」ということもできたのかもしれません。ですが、追いつめられて「もう消えてしまいたい」と泣きじゃくる我が子を前に、冷たく突き放すことなどできませんでした。
エリさんの「もう東京での一人暮らしは辞める。地元で再就職したい」という反省もあり、野呂さんは貯金1,800万円の中から500万円を取り崩し、エリさんの借金を全額一括返済することを決断したのです。
「あと少しお金を貯めて、ハワイへ行こう」と積み上げてきた貯金は大きく削られ、ハワイ旅行の計画は白紙となりました。それどころか、今後の生活費や医療費の備えを考えると、65歳で完全にリタイアすることも再考せざるを得ませんでした。
「65歳以降も、アルバイトや再々雇用で週4〜5日は働くことにしました。悲しいですが、子どもの危機を見過ごすことはできません。ハワイなんて、行っている場合じゃないでしょう? ですが、せめて近場の温泉でもいいから、妻を連れて行ってあげたいです」
野呂さんは遠い目をしながら、力なくそう呟きました。
