「出る・出ない」より先にやるべきこと
筆者が誠さんに提案したのは、次の3つです。
1.今日から自分に家賃を課す
誠さんの場合、引っ越しはまだしなくていいと思います。ただし、給料日に7万円を先取りで自動積立に回し、残りで暮らしてみると、これは貯蓄であると同時に、一人暮らしの家計に耐えられるかの予行演習をしてみましょう。年84万円。新NISAのつみたて投資枠を併用すれば、5年後には独立資金にも老後資金の種にもなります。
2.家に入れる3万円の意味を変える
金額そのものより、両親と家計の話をする入口にすることを勧めました。年金はいくらか、この家の維持費は年いくらか、介護になったら誰がどう動くのか。芽衣ちゃんの一言より、本当はこちらのほうがずっと重いテーマです。親の家計を知らないままの同居は、いずれ準備のない相続と介護に直結します。
3.期限を決める
実家を出るなら何年後、残るならなんのために残るのか。介護を見据えて同居を続けるのも、立派な選択です。ただしその場合も、家賃相当の積立と家計の見える化はセット。ずるずる続く実家暮らしと、目的のある同居は、家計的にはまったくの別物です。
相談を終えるとき、誠さんはこういいました。
「お盆に、また芽衣が来るんです。今度あの質問をされたら、オジサンはいま、自分の家を持つ準備をしてるんだよ、って答えます。嘘にならないように、今日、積立の手続きをして帰ります」
「早く夏休みが終わってくれ」というぼやきの正体は、姪への気まずさではなく、自分の将来から目を背けてきたことへの後ろめたさだったのでしょう。
実家暮らしは、それ自体が悪いわけではありません。恐ろしいのは、親の年金という見えない仕送りに支えられた家計を、点検しないまま50代を迎えることです。子どもの無邪気な一言は、ときにどんなライフプラン表よりも正確に、家計の急所を突いてきます。もし胸がざわついたなら、それは家計を見直す合図なのかもしれません。
波多 勇気
波多FP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
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