(※写真はイメージです/PIXTA)

マッチングアプリの普及に伴い、他人の写真や情報を無断で使う「なりすまし」のトラブルが後を絶ちません。軽い悪ふざけのつもりでも、名誉毀損などで高額な損害賠償を請求されるなど、深刻な事態に発展する恐れがあります。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」へよせられた質問をもとに、なりすまし行為の法的責任について、上野 仁平弁護士に解説していただきました。

なりすましが発覚した後の法的責任と対応

法的な見地からの回答は、それぞれ下記のようになります。

 

(1)今回のなりすまし行為は、侮辱罪や名誉毀損罪などの罪に該当するか?

今回のケースでは、直ちに侮辱罪や名誉毀損罪が成立すると断定することはできません。

 

侮辱罪や名誉毀損罪が成立するには、不特定又は多数の人に対し、被害者の社会的評価を低下させるような内容を公然と示したといえるかどうかが問題となります。

 

本件では、被害者本人の顔写真やSNSアカウント名を無断で使用し、性的な印象を与える文面を含むプロフィールを掲載しています。

 

このような内容は、被害者の社会的評価を低下させる可能性があり、名誉毀損罪や侮辱罪の成否が問題となる余地がありますが、実際に刑事事件として立件されるかどうかは、公開範囲、閲覧者の数、掲載期間、投稿内容などさまざまな事情を踏まえて判断されます。

 

ただし、相談者が警察から「刑事事件として扱えない」と説明を受けたとしても、それだけで犯罪が成立しないと断定できるわけではありません。

 

また、刑事責任とは別に、肖像権やプライバシー権、名誉権などの侵害として民事上の責任を負う可能性は十分に考えられます。

 

(2)相手から損害賠償を請求される可能性はあるのか。また、請求額の相場は?

損害賠償請求を受ける可能性はあります。

 

他人の写真や氏名、SNSアカウントを無断で使用し、本人になりすましたアカウントを作成した場合、権利や法律上保護される利益を侵害したとして不法行為(民法709条)が成立する可能性があります。

 

もっとも、損害賠償額は一律ではありません。

 

一般的には、投稿内容、拡散の程度、掲載期間、被害者が受けた精神的苦痛、加害者の対応(謝罪・削除など)といった事情が考慮されます。

 

本件では、アカウントはすでに削除されており、実際のメッセージのやり取りも行われていないとのことですので、被害は限定的であると評価される可能性があります。

 

一方、顔写真やSNSアカウントを利用した性的な内容のなりすましは精神的苦痛が大きいと評価されやすく、慰謝料が認められる可能性があります。

 

実際の慰謝料額は事案によって異なりますが、数十万円程度となるケースもあれば、それ以上となるケースもあり、一概に相場を示すことはできません。

 

(3)相談者は奨学金を受給しているが、奨学金も財産とみなされるのか。また、親の財産も考慮されるのか。

損害賠償責任を負うのは、原則として相談者本人です。

 

相談者が成人であれば、親が当然に支払い義務を負うことはありません。

 

また、奨学金についても、既に相談者名義の口座に振り込まれ、相談者が自由に管理している預金となっている場合には、財産の一部として扱われる可能性があります。

 

もっとも、損害賠償請求では、「親がお金を持っているから賠償額が高くなる」ということは通常ありません。

 

支払い方法については、一括払いが困難であれば、分割払いなどが話し合われるケースもあります。

 

(4)弁護士から連絡が来るとしたら、いつ頃、どのような手段で来るのか。

時期について決まったルールはありません。

 

早ければ数日以内に内容証明郵便や普通郵便で通知書が届くこともありますし、数週間から1ヵ月程度経ってから連絡が来るケースもあります。

 

また、電話番号が判明している場合には、電話で連絡が来ることもありますが、多くの場合は証拠が残る書面による通知から始まります。

 

通知が届いた場合、無視はお勧めできません。

 

感情的に対応したり、独断で回答したりすると、かえって紛争が長引くことがあります。内容を確認したうえで、必要に応じて弁護士へ相談することが望ましいでしょう。

 

(5)相手から請求された額を支払えば、今回の件はすべて解決(終了)となるのか。

必ずしもそうとは限りません。

 

例えば、示談書などで「今後一切請求しないこと」「本件について相互に紛争がないこと」といった内容が合意されていれば、その後に追加請求を受ける可能性は低くなります。

 

一方で、単に請求された金額を支払っただけでは「これで全て解決した」という合意が成立したとは限りません。

 

また、民事上の示談が成立したとしても、刑事事件として捜査が開始されている場合には、示談だけで必ず刑事手続が終了するわけではありません。

 

そのため、支払いを行う際には、示談書や和解書を適切に作成し、解決の範囲を明確にしておくことが重要です。

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