「誕生日くらい好きなものを」久しぶりに会った息子
「今度の土曜日、空いてる? 久しぶりにご飯でも食べない?」
長男の直樹さん(仮名・38歳)から半年ぶりに連絡が届いたとき、良子さん(仮名・69歳)はうれしくなりました。
夫とは10年前に死別し、現在は一人暮らし。年金は月約17万円で、住宅ローンを完済したマンションに住んでいます。預貯金は約1,800万円あり、毎月の生活に差し迫った不安はありませんでした。
直樹さんは独身で、数年前から飲食店や配送業などを転々としていました。仕事を辞めるたびに家賃や生活費が足りなくなり、良子さんへ連絡してきたといいます。
最初に渡したのは5万円でした。
「来月には新しい仕事が決まるから、必ず返す」
そう言われましたが、返済はありません。その後も携帯電話料金や引っ越し代などを頼まれ、数年間で援助した金額は合計100万円を超えていました。
良子さんが事情を尋ねると、直樹さんは「説教を聞きたいわけじゃない」と不機嫌になります。連絡が途絶え、しばらくすると何事もなかったように金銭を頼まれる。その繰り返しでした。
それでも、今回の連絡には金銭の話がありませんでした。ちょうど直樹さんの誕生日が近かったこともあり、良子さんはホテルのレストランを予約します。
「誕生日くらい、好きなものを食べさせてあげたかったんです。子どものころから、お祝いの日は家族で外食していましたから」
当日、直樹さんは以前より痩せていました。現在は知人の会社で働いているものの、収入は安定していないといいます。
良子さんはコース料理に加え、直樹さんが希望したワインも注文しました。会計は二人で約3万円。久しぶりに親子らしい時間を過ごせたと思っていました。
ところが、デザートが運ばれたあと、直樹さんが切り出します。
「実は、今月中に払わないといけない金がある。50万円だけ貸してほしい」
良子さんが理由を尋ねると、消費者金融などからの借り入れが重なり、返済が難しくなっていることが分かりました。
総務省『家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果』によると、65歳以上の単身無職世帯の可処分所得は月11万8,465円である一方、消費支出は14万8,445円です。平均では支出が所得を上回っており、貯蓄がある高齢者であっても、無制限に家族を援助できるわけではありません。
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