「外に出ればお金がかかる」…暇な老後に見つけた“親切”
関東近郊で妻と暮らす高橋さん(67歳・仮名)は、65歳で仕事をリタイア。夫婦の年金は月約23万円で、預貯金は退職時点で約1,500万円でした。
生活に困窮しているわけではありませんが、悠々自適に過ごせるほどの資産でもありません。高橋さんは自然と家で過ごすようになりました。
朝食を食べ、テレビを観る。昼食を済ませれば昼寝をして、気づけば夜――。妻とも会話らしい会話はありません。
「もともと夫婦仲が特別いいわけではありませんでした。退職してずっと家にいるようになったからといって、急に会話が増えるわけもなくて……」
そんなある日、高橋さんは“有意義な時間の使い方”を見つけました。
きっかけは、購入した家電についてメーカーに問い合わせたこと。コールセンターの担当者から丁寧に説明を受け、最後には「ご意見ありがとうございます」とお礼を言われました。
「それが、なんだかうれしかったんです。商品やサービスが改善されることにつながるし、役に立てたという気持ちになりました」
それからは、気になることがあると電話やメールで積極的に意見を伝えたり、質問をするようになりました。当初は本当に「改善したほうがいい」と思ったことだけ。それが次第に「責任者を出して」「客に対して、その言い方はどうなんですか」と、相手を問い詰めることが増えていったといいます。
そんな高橋さんの行動を知ったのが、普段は離れて暮らす息子でした。帰省した際、パソコンの調子を見てもらっていたなかで、企業に送ったメールを見られたのです。
高橋さんは、息子に早口でこう説明しました。
「メーカーや店に意見を伝えるのは、親切なんだよ。黙って顧客が離れるのが一番困るんだからさ」
しかし、息子は静かにこう言いました。
「それって相手のためじゃなくて、父さんが気持ちよくなりたいだけじゃない? クレーマーにならなように、本当に必要なときだけにしなよ」
そう言われ、高橋さんは何も言えませんでした。
