SNSの普及で、他人と「比較」する場面が爆発的に増えた
現代はお金に関する情報が、SNSをはじめネット上から手に入る時代です。NISAやiDeCoといった投資、節税、保険。調べれば調べるほど情報は出てきますし、専門家の解説も、誰かの成功例も、誰かの失敗談も、いくらでも取りに行けます。過去において、これほど情報が手に入りやすい時代はありませんでした。
それでもなお、迷いが消えないのはなぜでしょうか。これは知識が増えるほど、他人の基準で判断する場面が増えてしまうからです。
心理学では、自分と他者を比べることで自己評価を行う心の働きを「社会的比較」と呼びます。アメリカの社会心理学者レオン・フェスティンガーが提唱したこの理論によると、人が自分の能力や意見を他者と比較することで自己評価を行う心理学の理論を指します。
例えば、学校のテストや部活動での成績や偏差値などがいい例。これ自体は自然な心理メカニズムですが、SNSの普及によって比較の相手と頻度が爆発的に増えたことが、問題を大きくしています。SNSの利用頻度が高いほど、自分より「上」に見える他者の存在が増え、主観的な不安が有意に上昇するという研究報告があります(※)。
また、かつてであれば、比較の対象は身近な友人や同僚に限られていました。ところが現在では、スマートフォンを開くだけで、年齢も職業も環境も異なる無数の人々の「成功の断片」が目に飛び込んできます。
誰かの投資成績、SNSで見かける華やかなお金の使い方、同世代の平均年収、「みんながやっている」という情報――それらを見た瞬間、私たちの頭の中では自動的にこんな処理が始まります。「自分はこのままでいいのか」「もっとやるべきことがあるのではないか」「この選択は正しいのか」。
この思考には、一見するとお金も時間もかかっていないように見えます。しかし実際には、判断力を消耗し、自己決定感を削り、満足感を下げ、不安を増やすという、非常に高い心理的コストを私たちは支払っています。これを「比較コスト」と呼ぶことにします。
