不安を原動力とした選択ほど、安心を長く保てない
先ほど挙げたエピソードのように、お金の不安を感じたときにSNSで話題の投資法を調べたり、ランキング上位の金融商品に飛びついたりするのは、まさにこのパターンです。
一見すると合理的で勤勉な姿勢に見えますが、その行動の出発点は「不安を打ち消したい」という感情。自分の価値観や人生設計に基づいた判断ではありません。
カーネマンらの研究が示しているのは、不安を原動力とした選択ほど、安心を長く保てないということでもあります。不安を埋めるための行動は一時的な安堵しか生まず、しばらくするとまた次の不安がやってくるのです。
この構造が最もよく現れるのが「正解探し」の行動。不安を消すために探したはずの答えが、次の不安を生んでしまう。賢くなったからこそ、失敗の可能性もすべて想像できてしまう。
本来、知識は私たちを安心させてくれるはずですが、お金に関しては逆転現象が起きがち。問題の本質は知識の量ではありません。自分にとって何が大切なのか、何に幸せを感じるのか。この基準が言葉になっていないことこそが、不安を長引かせている要因なのです。
だからこそ、不安通貨をこれ以上増やさないために必要なのは、さらに行動を重ねることでも、さらに知識を積み上げることでもありません。
まず、この不安が増殖する仕組みに気づくことが大事。脳が不安を優先すること、比較を損失に変換してしまうこと、正解探しが次の不安を生むこと、にです。「あ、今このループに入ってるかも」と気づいた瞬間、冷静に自分を観察することができ、不安に振り回される頻度と強度が減ります。
不安の連鎖を断ち切る第一歩として、ぜひ意識してください。
櫻井 かすみ
ママ金融投資家/ファイナンシャル・プランナー/株式会社トウシナビ 代表
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