日本人よりも余裕が感じられる働き方
こんな体験はまだいろいろありますが、まとめてみると勤勉といわれるドイツも、日本の基準で見るとやはりヨーロッパです。しかしヨーロッパのレベルでみると他の国よりかなりしっかりしているといったところでしょうか。しかし画一的な日本に較べて、とても個性的で、余裕を感じます。
日本的なめちゃくちゃな働き方は絶対にやりません。貴重な時間を無駄に使って体力をすり減らすよりも、人間的な生活を楽しんで、心豊かな人生を送ろうとしています。しゃかりきになって働く日本と、悠然と働くドイツが、一人当たりGDPなどの数字で見るとだいたい同じ結果になります。
ドイツ経済は戦後の奇跡の成長を終えて、安定期に入っていたようです。ドイツの成長率は決して高くありません。八〇年代のはじめから成長率は一%を超えるかどうか。マイナスもありました。しかし周辺の国に較べると成長率は少し上で、インフレ率は低い。生産性は他の国との差が徐々に開きます。
やがて強いマルクと他の弱い通貨の間に、目に見える格差が生じて、為替市場への投機が始まります。激しい投機で市場閉鎖。そして最後はマルクの切り上げと弱い通貨の切り下げです。過去一貫してこの繰り返しです。マーケットが荒れるたびに大儲けするのが投資家ソロスの投機ファンドです。
「借金=罪」と考える堅実な気質
いつも強いマルクはどこから生まれてくるのでしょうか。ドイツ人はしまり屋だといわれます。たとえば電気の無駄遣いをしません。アパートの廊下の電気は三分ほどで自動的に消えます。東日本大震災の時に東京の街の照明が節電で一時うす暗くなりましたが、ドイツの街の照明は普段からもう一段うす暗いものでした。
ドイツ女性の服装はきちんとしていて清潔ですが、けばけばした派手なものはほとんど見かけません。メルケル首相の飾り気のない服装は、ドイツ風というより東ドイツ風なのかもしれません。
ドイツの緊縮政策といわれるものが、今しきりに批判されています。私はこの批判には異議があります。繰り返し取り上げますが、たしかにドイツ人は借金をするのが嫌いです。よく言われる話ですが、「借金」というドイツ語の単語「Schuld」には、「罪」という意味もあるのです。したがってフランスを含む南欧諸国の赤字予算たれ流しには、我慢ができないのでしょう。厳しい緊縮を要求しますが、これは財政学上の緊縮政策対成長政策の問題とは別の次元の話です。ドイツは、無駄な大金を使うな、まわりの国から借金しているのに大盤振る舞いの宴を開くのはやめてくれと言っているのです。