「何かあったら連絡して」友人の一言で気づいたこと
翌週、直樹さんは大学時代の友人と食事をしました。腹痛の話をすると、友人は「何かあったら連絡してくれればいいのに」と言いました。
「夜中でも?」
「当たり前だろ」
直樹さんは、自分にはそんなふうに頼れる相手はいないと思い込んでいたことに気づきました。
考えてみれば、友人との付き合いを遠ざけていたのは自分でもありました。誘われた旅行を「お金がかかるから」と断り、少し高い店での食事にもほとんど参加しない。休日も、お金を使わずに済むからと自宅で過ごすことが増えていました。
「節約しているだけのつもりだったんです。でも、人と会ったり、どこかへ出かけたりすることまで減らしていたんですよね」
老後が不安で始めた資産形成でした。しかし、45歳で1億円を超える金融資産を持つようになっても、直樹さんは20代のころとほとんど変わらない基準で支出を抑え続けていました。
そこで初めて、「いくらまで貯めれば安心なのか」を考えたといいます。明確な答えは出ませんでした。
それでも、残高を増やすためにすべての支出を削り続ける必要はないのではないか。将来への備えとは別に、今の自分のために使ってもいいお金があるはずだと考えるようになりました。
直樹さんは、それまでの生活を大きく変えたわけではありません。積み立ても継続しています。
それでも、友人から旅行に誘われたとき、「いくらかかるか」だけで断るのをやめました。以前から興味があった料理教室にも通い始め、遠方に暮らす両親を訪ねる回数も増やしました。
「節約をやめたわけじゃないです。ただ、使わずに残すことばかり考えるのはやめました」
体調不良を経験したことから、緊急時の連絡先も整理しました。近くに住む友人とも以前より頻繁に連絡を取るようになっています。
将来への備えとして資産を形成することは重要です。一方、目標としていた金額に達しても支出への不安が消えず、貯めること自体が目的になってしまう場合もあります。資産額だけではなく、これからどのような生活を送りたいのかを考え、それに必要なお金と使えるお金を整理することも、資産形成の一部といえるでしょう。
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