(※写真はイメージです/PIXTA)

資産形成のため、若いうちから支出を抑え、貯蓄や投資を続ける人もいます。将来への備えは大切ですが、お金を貯めることが生活の最優先になれば、現在の暮らしとのバランスに迷うこともあります。十分な資産を築いたあと、何のために貯めるのかを考え直す人もいるようです。

資産1億円を超えても、昼食は500円以内

平日の夜11時過ぎ、直樹さん(仮名・45歳)は自宅のリビングでパソコンを開いていました。

 

画面に表示されていたのは、銀行口座と証券口座の残高です。預貯金や株式、投資信託などを合わせた金融資産は、すでに1億円を超えていました。

 

直樹さんは独身で、一人暮らし。大学卒業後から同じ会社に勤め、現在の年収は約1,000万円です。もともと浪費をしない性格でしたが、30代に入ってから本格的に資産形成を始めました。

 

給料が上がっても生活水準はほとんど変えず、余ったお金は投資へ回します。昼食は500円程度。会社へは水筒を持参し、タクシーは原則使いません。旅行もほとんどせず、服は傷むまで着ます。

 

「その年収なら、もう少しいいところに住めるでしょう」

 

と言われても、

 

「家賃ほどもったいないものはないよ」

 

と笑っていました。住んでいるのは、20代のころから暮らす1LDKの賃貸マンションです。

 

資産が5,000万円を超えたときも、8,000万円を超えたときも、生活は変わりませんでした。

 

「1億円までいったら、少し使おう」

 

そう考えていた時期もありました。しかし実際に1億円を超えると、今度は残高が減ることに抵抗を感じるようになったといいます。

 

転機は、冬のある夜でした。風呂から上がった直樹さんは、急な腹痛に襲われました。横になっても治まらず、冷や汗が出てきます。

 

「救急車を呼ぶほどなのかも分からなくて、とりあえずベッドでじっとしていました」

 

しばらくして症状は落ち着き、翌日受診したところ、大事には至りませんでした。ただ、暗い部屋で一人横になっていた数十分間に、直樹さんの頭に浮かんだことがありました。

 

「一人で倒れたら終わりなんだな……」

 

家族と疎遠なわけではありませんが、両親は遠方に暮らしています。友人とも年に数回会う程度。会社以外で定期的に会う相手はいませんでした。

 

内閣府『孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年人々のつながりに関する基礎調査)』では、孤独感が「しばしばある・常にある」「時々ある」「たまにある」と回答した人を合わせると約4割にのぼります。また、同居していない家族や友人と直接会って話すことが「全くない」という人も1割程度います。孤独や孤立は高齢者だけの問題ではありません。

 

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