夫婦が決めた新しいルール
夫婦の不満が表に出たのは、秋の旅行を延期したときでした。2泊3日で温泉へ行く予定でしたが、真理さんから「土曜日に仕事が入った」と頼まれ、美代子さんが旅行の日程を変えようと言い出したのです。
隆之さんは反対しました。
「今回は断ろう。俺たちにも予定があるんだから」
「でも、困るでしょう」
「毎回こっちが予定を変えるのは違うんじゃないか」
その夜、二人は退職後の生活について初めてじっくり話しました。
隆之さんは、会社員時代にできなかった旅行をしたい。美代子さんも、友人との付き合いや習い事を続けたいと思っていました。
それでも、いつの間にかカレンダーには孫の予定が先に書き込まれるようになっていました。
「孫と過ごすのが嫌なわけじゃないんです。でも、『仕事を辞めたんだから時間があるでしょう』と言われると、退職後の時間は全部空いている時間なのか、と思ってしまって」
夫婦は真理さんを呼び、今後の預かり方について話し合いました。
原則として月2回まで。急な依頼は、本当に対応できるときだけ引き受ける。旅行や友人との約束が入っている日は変更しない――。
真理さんは最初、「そんなに負担だったとは思わなかった」と驚きました。
娘夫婦もその後、自治体の子育て支援を調べ、ファミリー・サポート・センターへの登録を検討することになりました。同事業は、子どもの預かりなどの援助を受けたい人と援助を行いたい人を地域で結びつける仕組みです。
現在も、隆之さん夫婦は孫を預かっています。
ただし、以前のように予定を空けて連絡を待つことはなくなりました。先延ばしになっていた温泉旅行にも出かけ、美代子さんも友人との予定を入れています。
祖父母による子育ての手助けは、親世代にとって大きな支えになります。一方、祖父母にも自分たちの生活があります。家族だからと曖昧にするのではなく、どの程度なら無理なく手伝えるのかを話し合い、必要に応じて地域の子育て支援も利用することが、双方の負担を増やさないために重要です。
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