生活に変化…妻の帰宅時間を聞かなくなったワケ
生活が変わるきっかけは、由美さんの一言でした。
「一度、地域センターに行ってみたら?」
近所の地域センターで、スマートフォンの使い方を高齢者に教えるボランティアを募集していたのです。徹さんは最初、乗り気ではありませんでした。
「人に教えられるほど詳しくないよ」
「仕事でずっとパソコン使ってたでしょう。話を聞くだけでも行ってみれば?」
説明会へ行くと、参加者の多くは徹さんと同年代。月に数回、スマートフォンの基本操作を一緒に確認する活動でした。
徹さんは週1回の活動から始めました。
「写真を家族に送りたい」「病院の予約をしたい」と相談され、一緒に画面を操作する。分からないことはほかのスタッフに聞けばよく、会社員時代のような責任を負う仕事でもありません。
数ヵ月後には、知人から紹介された会社で週1日の事務補助も始めました。収入は月数万円ほどです。
「お金のためなら、無理に働く必要はないんです。でも、火曜日は地域センター、木曜日は仕事、と予定が入るだけで、ほかの日まで違って感じるんですよね」
厚生労働省『令和7年高年齢者雇用状況等報告』によると、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は34.8%となっています。高齢期の就業は、生活費を得るためだけでなく、経験を生かした短時間勤務など、さまざまな形があります。
徹さんはいまも旅行や平日の自由な時間を楽しんでいます。ただ、以前のように一日中テレビを見て過ごす日は減りました。
由美さんも、夫から「今日は何時に帰る?」と頻繁に聞かれることがなくなったと笑います。
退職後の暮らしに必要なのは、経済的な準備だけとは限りません。仕事を辞めたあと、誰と会い、何をして一日を過ごすのか。趣味や地域活動、無理のない仕事など、自分なりの予定や人とのつながりを持つことも、長い老後を過ごすうえで大切な要素の一つです。
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