「頼んだわけじゃない」息子の言葉で分かったすれ違い
その気持ちが表に出たのは、翌年の学費について話していたときでした。健太さんが何気なく、「今年も大学のお金が結構かかるんだよ」と話したため、文子さんは思わず言いました。
「去年、私も120万円出したでしょう。あれ、少しは助かったの?」
「もちろん助かったよ」
「でも、あなたたちから何も言われなかったから」
健太さんはしばらく黙ったあと、意外な言葉を返しました。
「でも、母さんが出したいって言ったんだよね?」
文子さんは耳を疑いました。
「それはそうだけど……」
「こっちから120万円出してくれって頼んだわけじゃないよ。お礼を言わなかったのは悪かったけど、そこまで気にしてるとは思わなかった」
さらに健太さんは、「あとから感謝を求められるなら、最初から受け取らなければよかった」と口にしました。文子さんには、その言葉が強く残りました。
自分は「家族を助けた」と考えていた。一方、息子は「母が孫のために出したかったお金」と受け止めていたのです。
なお、祖父母など扶養義務者から、教育上通常必要と認められる学費などを必要な都度受け取り、直接教育費に充てる場合は、原則として贈与税の課税対象にはなりません。ただし、教育費の名目で受け取ったお金を預金するなど、実際の教育費に充てなかった場合は扱いが異なります。国税庁『No.4405 贈与税がかからない場合』でも、この点が示されています。
その後、文子さんは翌年度の学費については援助しませんでした。
健太さんから頼まれたわけではありません。文子さん自身が、「これからは自分から大きなお金を出すのはやめよう」と決めたのです。
親から子、祖父母から孫への援助は、家族だからこそ条件を曖昧にしたまま行われがちです。しかし、金額が大きくなるほど、援助する側の期待と受け取る側の認識に差が生じることもあります。誰のために、いくら出すのか。返済の必要はあるのか。感謝や見返りを期待していないか。お金を渡す前にお互いの認識を確認しておくことが、家族間のすれ違いを防ぐことにつながります。
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