「自分の生活まで削らないで」家族で決めた援助の線引き
正人さんはその夜、妹に電話をしました。
「母さんから毎月お金をもらってるんだって?」
由佳さんも家計が苦しいことは認めました。ただ、母が食費まで切り詰めているとは知らなかったといいます。
「お母さんが『年金もあるし、使うこともないから大丈夫』って言うから……」
久子さん自身にも、「娘や孫が困っているなら助けたい」という気持ちがありました。問題は、援助する金額や期間を決めないまま続けていたことでした。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、65歳以上の一人暮らしは今後も増えると見込まれています。2025年には65歳以上人口に占める割合が男性18.3%、女性25.4%と推計されており、一人で家計を管理する高齢者も珍しくありません。
家族で話し合った結果、久子さんから由佳さんへの毎月5万円の援助はいったん終了することになりました。由佳さん一家も教育費や家計を改めて整理し、必要であれば公的な制度も含めて別の方法を探すことにしました。
「助けたい気持ちは分かる。でも、そのために母さんが食べるものを減らしたら意味がないよ」
久子さんは少し不満そうでしたが、「分かった」と答えました。
それから正人さんは、月に一度は母の家を訪ねるようになりました。食事や買い物など、普段の暮らしに無理が出ていないかを見るためです。
高齢の親から子や孫への援助は、それ自体が問題なのではありません。ただし、年金生活では一度増えた支出を収入の増加で補うことが難しい場合があります。家族を支えるための援助であっても、まず本人の生活費や今後必要になる資金を確保したうえで、金額や期間を決めておくことが重要です。
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