「また病院に行くの?」――81歳の母は、今日もまた近所の“かかりつけ”へ足を運びます。一方、85歳の父は、たいていの病気は「寝ていれば治る」と受診を嫌がります。高齢者の「病院に行きすぎ」と「行かなすぎ」。その背景には、健康への不安だけでなく、孤独や生活環境、医療との向き合い方など、それぞれの事情があるようです。

医療費1割負担、病院に足繁く通う母

「母はすぐ病院に行ってしまうんです。それが……ちょっと過剰なんですよね」

 

近所に住む高齢の両親を心配し、日ごろから様子を見に行っているという正田聡子さん(仮名・54歳)。ここ数年気になっているのが、母・道子さん(81歳・仮名)の病院通いです。

 

「この前も『ちょっと喉が痛い』って内科に行って。薬をもらって帰ってきた2日後に、また『まだ少し痛いから診てもらってくる』って……。『お母さん、薬ももらってるんだから、もう少し様子を見たら?』とは言うんですけどね」

 

81歳という年齢を考えれば、体調の変化に敏感になること自体は悪いことではありません。母も先生や受付の人たちと顔見知りで、その点は安心です。

 

「でも、いつも混んでいる病院です。そんなに頻繁に行って、邪魔になっているんじゃないかって。先生や受付と話をするのが楽しみなんでしょうけど、本来は、本当に必要な時に行くところじゃないですか」

 

夏風邪で咳き込む会社員、腹痛を訴える学生、高熱を出した子どもを抱えた母親……。そんな中にわざわざ行けば、待ち時間にも影響が出るでしょう。

 

「うちの両親は決して裕福ではありません。年金は夫婦で月21万円程度で、貯金もそう多くはないと思います。でも、医療費は1割負担で、比較的払いやすい金額です。それもあるんですかね、つい通ってしまうのは……」

 

75歳以上の人は原則として後期高齢者医療制度の対象となり、医療費の窓口負担は原則1割(一定以上の所得がある人は2割、現役並み所得者は3割)。道子さんは1割負担で、受診のたびにかかる医療費がまったく気にならないわけではありませんが、やはり「負担の小ささ」と「通う頻度」は無関係ではなさそうです。

 

それでも、聡子さんは「病院へ行く回数を減らして」と言うことにためらいがあります。

 

「母は寂しいんだと思います。昔から仲がよかった人も、亡くなったり、施設に入ったりして。母に“行かないほうがいい”といって、病気が見つからないのも怖いですし。あと、実は、父は全然病院に行かなくて……。それはそれで困っているんです」

病院に行かない父…「異変に気づけない」

聡子さんの父、昭三さん(仮名)は85歳。母とは正反対で、ほとんど病院へ行きません。

 

「ちょっとくらい具合が悪くても、『寝てれば治る』って言うんです」

 

以前、歯が痛いと訴えていたときも、「歯医者に行ったほうがいいんじゃない?」 と聡子さんが勧めると、「歯医者は嫌いだから嫌だ」の一点張り。結局激痛に見舞われてようやく歯医者に駆け込み、歯を失いました。

 

「父は、病院に行くこと自体が面倒なんですよ。待たされるのも嫌だし、医者にあれこれ言われるのも、お金がかかるのも嫌。でも、それだと大きな病気の兆しに気づけないから、心配で」

 

家族からすれば、こちらはこちらで心配です。母は、少しの不調でも病院へ行く。父は、明らかに受診したほうがよさそうな状態でも、なかなか行かない。

 

「本当に、2人を足して2で割ったくらいがちょうどいいんですけどね」

 

聡子さんは苦笑します。

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