(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の住み替えでは、住み慣れた家を手放す寂しさや、購入費用への不安が先に立ちます。一方、戸建ての階段や庭、修繕の負担は、年齢とともに重くなるものです。移動しやすく管理しやすい住まいを選ぶことで、暮らしが楽になる場合もあります。

「戸建てには戻れません」と話す理由

引っ越し後、夫婦の生活は大きく変わりました。

 

和子さんは天候を気にせず買い物へ行けるようになり、隆夫さんは電車で美術館や図書館へ出かける機会が増えました。以前は車で送迎していた通院も、徒歩と電車で済みます。

 

「冷蔵庫が空になっても、すぐ下で買えます。雨の日に車を出してもらう必要もありません」

 

戸建てのころは、台風のたびに雨戸や庭木を確認し、留守にする際も空き巣や漏水を心配していました。マンションでは施錠して出かければよく、旅行の回数も増えました。

 

一方で、新たな固定費も生まれました。

 

管理費と修繕積立金、駐車場を除いた共用部分の負担を合わせると月約5万5,000円。固定資産税も戸建て時代より高くなりました。修繕積立金が将来引き上げられる可能性もあります。

 

夫婦は購入前に長期修繕計画や管理組合の議事録を確認し、年金だけで毎月の固定費を賄えるかを計算しました。住み替え後に残る貯蓄についても、介護や医療、臨時支出に備える資金を分けています。

 

総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の月平均可処分所得は22万1,544円、消費支出は26万3,979円。平均では消費支出が可処分所得を上回っており、住み替え後も管理費や税金を含めた資金計画が欠かせません。

 

引っ越しから2年後、夫婦は近所を訪れた友人から「戸建てが恋しくならない?」と聞かれました。和子さんは、少し考えて答えました。

 

「思い出はある。でも、戸建てには戻れないね。家の世話をしなくていいだけで、こんなに気楽になるとは思わなかった」

 

隆夫さんも、住み替えはタワーマンションへの憧れではなかったと話します。

 

「何より大事だったのは、買い物と病院に歩いて行けることです。元気なうちに引っ越したから、自分たちで家財を整理し、新しい場所にも慣れられました」

 

都心のタワーマンションが、すべての高齢者に適しているわけではありません。高い管理費や固定資産税、災害時のエレベーター停止など、確認すべき点もあります。

 

それでも夫婦にとって住み替えは、家の維持に使っていた時間と労力を取り戻す選択でした。高齢期の住まいでは、広さや資産価値だけでなく、10年後も無理なく生活できるかを考えることが気楽な暮らしにつながります。

 

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