(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の楽しみとして、孫との時間を挙げる人は少なくありません。しかし、子どもの転勤や孫の成長などによって、会える頻度は変わっていきます。家族とのつながりは大切ですが、それだけを生活の中心にすると、環境が変わったときに大きな喪失感を抱えることがあります。

「孫が来ない週末」が教えてくれたこと

ある平日の午後、奈緒さんが一人で実家を訪れました。

 

「最近、電話の声が元気ないけど、大丈夫?」

 

雅子さんは最初、「何でもない」と答えました。しかし、孫のために買ったままになっている菓子や飲み物を見て、思わず本音をこぼしました。

 

「あなたたちが来ないと、一週間、誰ともまともに話さないことがあるの」

 

奈緒さんは驚きました。雅子さんが近所付き合いや趣味を楽しんでいると思い、訪問が減っても心配していなかったのです。

 

「お母さん、私たちを待って、ほかの予定を断っていたの?」

 

以前、友人から日帰り旅行や体操教室に誘われたことがありました。しかし雅子さんは、「週末に孫が来るかもしれない」と予定を入れませんでした。平日の習い事も、月謝がもったいないと見送っていました。

 

「孫が生きがいだと思っていたけれど、自分の生活を孫中心にしてしまっていたのかもしれないね」

 

奈緒さんは、今後は無理に毎週会おうとせず、月に一度、あらかじめ食事の日を決めようと提案しました。予定が決まっていれば、雅子さんもほかの日を自由に使えます。

 

雅子さんは地域の広報紙を見て、以前から興味のあった水彩画講座へ申し込みました。最初は一人で参加することに緊張しましたが、同年代の女性と知り合い、講座の後に喫茶店へ行くようになりました。

 

また、近所の図書館で月2回行われる読み聞かせの手伝いも始めました。

 

雅子さんは、孫への祝い金や外食代として使っていたお金の一部を、自分の講座代や小旅行の費用に回すことにしました。貯蓄を大きく減らす使い方ではなく、毎月の予算を決めて楽しんでいます。

 

年金や貯蓄は、高齢期の暮らしを支える大切な備えです。一方で、家族以外にも会いたい人や出かけたい場所があることは、お金だけでは得られない安心につながります。

 

雅子さんが気づいた「老後に必要なもの」は、複数の楽しみと居場所を持つことだったのです。

 

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