母の生活費だと思っていた仕送りの行き先
由香さんは3年前に離婚し、高校生の息子とともに実家へ戻っていました。
浩司さんは、母が一人で暮らしていると聞かされていたため、言葉を失いました。居間には由香さん親子の衣類や学校用品が並び、冷蔵庫も3人分の食材でいっぱいです。
「どういうこと?」
浩司さんが尋ねると、文子さんは観念したように事情を話しました。
由香さんは離婚後、パート収入だけでは家賃と教育費を負担できず、文子さんを頼ってきました。実家に戻った後も収入は安定せず、食費や光熱費、孫の学用品代の多くを文子さんが支払っていたのです。
「由香が困っているとは、あなたに言えなかったの」
兄妹は以前、父親の介護をめぐって口論になり、それ以来ほとんど連絡を取っていませんでした。文子さんは、浩司さんに話せば妹への援助を拒まれると思い、「自分の生活費が足りない」と説明していたのです。
「俺は母さんが食べるものにも困っていると思って送っていたんだよ」
「ごめんなさい。でも、この子たちを追い出せなかったの」
浩司さんが確認すると、仕送りのほぼ全額が毎月の生活費に使われていました。ぜいたくをしていたわけではありません。しかし浩司さんにとっては、使い道を隠されていたことが問題でした。
国税庁によると、親子や兄弟姉妹など扶養義務者から受け取る生活費のうち、通常必要と認められ、必要な都度直接使われるものは贈与税の対象になりません。一方、生活費名目でも預金したり、株式や不動産の購入に充てたりした部分には、贈与税がかかる場合があります。仕送りの税務上の扱いは、金額だけでなく実際の使途によって異なります。
浩司さんは、その場で送金を打ち切るとは言いませんでした。ただし、今後は母だけでなく由香さんも含めて家計を開示し、必要額を話し合うことを条件にしました。
確認すると、利用していない保険や通信契約があり、月2万円近く固定費を減らせることがわかりました。由香さんは勤務時間を増やし、毎月3万円を家計へ入れることにしました。孫の教育費についても、学校や自治体の相談窓口で利用できる制度を確認しています。
浩司さんの仕送りは、月8万円から3万円へ減らしました。母の通院費や家の修繕など、目的を確認したうえで必要なときに支援する形へ変更しています。
「仕送りが嫌だったわけじゃない。ただ、本当のことを話してほしかった」
文子さんは、息子に負担をかけたくないと思いながら、結果としてより大きな負担を背負わせていました。
聞きにくい話もありますが、使い道を曖昧にしたまま送金を続ければ、不信感につながります。援助を長く続けるためにも、誰のために、何に、いくら必要なのかを共有する必要があります。
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