「定年まで働いた結果がこれですか」と漏らした理由
ある日、孝雄さんは買い物帰りにふらつき、マンションの入口でしゃがみ込みました。通りかかった管理人が声をかけ、休憩室で水分を取らせてくれました。
事情を聞いた管理人から地域包括支援センターへの相談を勧められ、後日、職員が自宅を訪ねました。
冷蔵庫に入っていたのは、納豆、豆腐、漬物、数個の卵だけでした。体重を尋ねられ、久しぶりに量ってみると、半年前より5キロ近く減っています。
「定年まで働いた結果がこれですか……。人に食べる物の心配をされるとは思いませんでした」
孝雄さんは、生活に困っていると認めることが恥ずかしかったといいます。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』では、65歳以上の単身無職世帯の月平均可処分所得は11万8,465円、消費支出は14万8,445円でした。平均でも支出が可処分所得を約3万円上回っています。
職員と一緒に家計を確認すると、使っていない有料放送や複数の保険契約が見つかりました。通信契約を見直し、保険についても保障内容を確認した結果、月1万円ほど固定費を減らせる見込みとなりました。
自治体が案内する配食サービスも週3回利用し、食費を単に削るのではなく、必要な栄養を確保する方法へ切り替えました。
厚生労働省の「高齢者の低栄養予防」では、1日1食や2食といった偏りを避け、1日3食を規則正しく取り、各食でたんぱく質を含む食品を摂取することが筋肉量の維持につながるとしています。令和5年「国民健康・栄養調査」では、65歳以上で低栄養傾向にある人の割合は男性12.2%、女性22.4%でした。
孝雄さんは今も、特売品を選び、無駄な買い物を避けています。ただし、昼食を抜くことはやめました。
「食べないことを節約だと思っていました。でも倒れて入院したら、もっとお金がかかりますね」
年金生活で支出を見直すことは必要です。しかし、最初に削るべきなのは食事とは限りません。固定費や利用できる支援を確認し、体を守るための支出を残すことも、限られた年金で暮らし続けるための大切な家計管理です。
【関連記事】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

