「優しいばぁば」を続けるために伝えた本音
その日の夕方、迎えに来た長女は、孫が寿司を食べたがっていると聞いて言いました。
「じゃあ、夜までお願いしてもいい? 私たちは外で食べてくるから」
洋子さんは思わず聞き返しました。
「あなたたちだけで?」
「子どもを連れて行くと落ち着かないし、お母さんも孫と過ごせていいでしょう」
その言葉に、洋子さんは我慢できなくなりました。
「私は、毎週預かりたいと言ったことはないわよ」
長女は驚いた顔をしました。
「孫が来ると、いつもうれしそうだったじゃない」
「うれしいわ。でも毎回食事を作って、遊びに連れて行って、欲しいものまで買うのは疲れるの。急に連れてこられると、私の予定もなくなってしまう」
洋子さんは、翌日に友人と出かける予定があっても、孫を預かった疲れで取りやめたこと、食費や外出費が月に数万円増えていることも伝えました。
長女は、しばらく黙っていました。
「そんなに負担だったなら、言ってくれればよかったのに」
「言わなくても少しは考えてほしかった。でも、私もずっと大丈夫なふりをしていたから悪かったわね」
話し合いの結果、孫を預かるのは月2回を基本とし、少なくとも数日前までに相談することになりました。食事や外出に必要なお金も、長女が事前に渡します。洋子さんが疲れている日や予定がある日は、理由を詳しく説明せず断ってよいと決めました。
急な用事がある場合は、自治体のファミリー・サポート・センターなども検討することにしました。同制度は、子どもの預かりや送迎を依頼したい人と、援助を行う地域住民をつなぐ仕組みです。祖父母だけに頼らず、地域の支援を組み合わせる方法もあります。
翌月、孫たちが遊びに来た日には、長女が昼食用の弁当とおやつを持たせていました。
「今日はばぁばも一緒に食べよう」
孫に誘われ、洋子さんは久しぶりに落ち着いて食卓に座りました。料理や買い物に追われなければ、孫の話をゆっくり聞く余裕があります。無理を重ねて笑顔を失えば、孫との時間そのものが苦痛に変わってしまいます。
できないことを伝え、親世帯にも責任を担ってもらう。それは冷たい対応ではなく、これからも心から「会えてうれしい」と言える祖母でいるために必要な線引きだったのです。
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