「屋根が危ない」と言われ…現金を渡してしまった母
由美さん(仮名・45歳)は、70歳の母・和子さん(仮名)の家を月に2回ほど訪ねていました。
和子さんは5年前に夫を亡くし、戸建てで一人暮らしをしています。年金は月19万円ほど。住宅ローンは完済していましたが、築35年を超えた家には修繕が必要になるため、普段から節約を心がけていました。
和子さんは銀行に預けている貯蓄とは別に、夫の葬儀後に残った現金150万円を封筒に入れ、寝室の引き出しで保管していました。
「何かあったとき、すぐ使えるお金がないと不安なの」
由美さんは、多額の現金を自宅に置くことを心配していました。
「必要になったら私が銀行へ連れて行くから、預けたほうがいいよ」
それでも和子さんは、「誰にも場所は言っていないから大丈夫」と聞きませんでした。
ある日、由美さんが実家を訪ねると、玄関脇に見慣れない段ボールや工具が置かれていました。
「何か工事するの?」
「屋根を直してもらったの。近くで工事をしている人が、瓦がずれていると教えてくれたのよ」
業者は突然訪問し、「このままでは雨漏りする」「強風で瓦が落ちれば近所にも迷惑がかかる」と説明したといいます。その場で屋根に上がり、撮影したという写真も見せられました。
見積額は約180万円でした。しかし和子さんが「そんなお金は払えない」と言うと、業者は工事範囲を減らし、150万円で対応すると提案しました。
「銀行へ行くのは大変でしょう。現金なら手数料もかからないですよ」
そう言われ、和子さんは封筒の現金を2回に分けて渡していました。
由美さんは寝室の引き出しを開けました。封筒は残っていましたが、中は空です。
「あのお金、どこへ行ったの?」
事情を聞いた由美さんは絶句しました。工事は屋根の一部に塗料のようなものを塗っただけで、和子さんの手元には簡単な領収書しかありません。契約書には、工事内容や解約に関する説明も十分に記載されていませんでした。
国民生活センターは、突然訪問した業者が屋根の不具合を指摘して不安をあおり、高額な修理契約を結ばせる「点検商法」への注意を呼びかけています。特に高齢者では、点検商法に関する相談が目立っています。
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