母が老人ホームへ…実家売却を決断した長男。買い手がついたのに「たった6畳」のせいで手放せないワケ【土地家屋調査士が解説】

母が老人ホームへ…実家売却を決断した長男。買い手がついたのに「たった6畳」のせいで手放せないワケ【土地家屋調査士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

誰も住まなくなった実家の買い手が見つかり一安心……と思った矢先、買主側の金融機関から「融資の許可が下りない」とストップがかかることがあります。その原因となり得るのが、長年放置されてきた建物の「未登記部分」です。「たった数畳の増築だし、役所からも指摘されていないから大丈夫」という楽観視は、厳格な不動産取引においては通用しません。今回は、実家の売却中に未登記の増築部分が発覚した60代男性Bさんの事例をもとに、土地の境界の専門家である土地家屋調査士・小川曜氏が「増築未登記」のリスクや注意点について解説します。※プライバシーに配慮し、複数の事例を再構成して記事化しています。

増築登記に必要な「所有権の証明資料」の壁

増築登記を申請するにあたっては、「その未登記の増築部分の所有権が誰にあるのか」を証明する資料が必要になります。

 

通常、未登記建物の場合は「固定資産税評価証明書」と「納税証明書」を用いて所有権を証明するのが一般的です。固定資産税の納税義務者(名義人)は実際の所有者であると推認できるため、その証明書と、実際に納税している事実を示す書類を用意します。

 

しかし今回のケースでは、未登記の増築部分がそもそも評価・課税されていなかったため、役所からこれらの証明書を取得することができません。このような場合は、まず役所に「固定資産税の評価・課税を求めるための届出(未登記家屋所有者届出書など)」を提出し、課税対象にしてもらう手続きから始める必要があります。

 

さらに今回の増築部分は、Bさんの父が増築したものであるため、遺産分割の際に間違いなくBさんの所有になったことを証明しなければなりませんでした。なぜなら、増築後に相続が発生した場合、未登記の増築部分は相続人全員の共有財産とみなされ、遺産分割協議の対象になるからです。

 

共有状態にある実家の未登記増築部分をBさん単独の所有であることを証明するためには、「未登記の増築部分もBさんが相続する」という旨が明記された遺産分割協議書等の資料が欠かせません。

 

書類作成も遺産分割協議もやり直し?

当時の遺産分割協議書の文面を確認したところ、運よく「本協議書に記載のない相続財産は、すべて相談者が相続する」という包括条項(清算条項)が記載されていたため、本来であればそれで事足りるはずでした。

 

しかし、手元にあるのは遺産分割協議書の「写し(コピー)」だけで、法務局に提出するための原本が見当たりません。そのため、やむを得ず「未登記の増築部分」を明記した遺産分割協議書を再作成することになりました。

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※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている及び事例を合わせて記載している部分があります。

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