母が老人ホームへ…実家売却を決断した長男。買い手がついたのに「たった6畳」のせいで手放せないワケ【土地家屋調査士が解説】

母が老人ホームへ…実家売却を決断した長男。買い手がついたのに「たった6畳」のせいで手放せないワケ【土地家屋調査士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

誰も住まなくなった実家の買い手が見つかり一安心……と思った矢先、買主側の金融機関から「融資の許可が下りない」とストップがかかることがあります。その原因となり得るのが、長年放置されてきた建物の「未登記部分」です。「たった数畳の増築だし、役所からも指摘されていないから大丈夫」という楽観視は、厳格な不動産取引においては通用しません。今回は、実家の売却中に未登記の増築部分が発覚した60代男性Bさんの事例をもとに、土地の境界の専門家である土地家屋調査士・小川曜氏が「増築未登記」のリスクや注意点について解説します。※プライバシーに配慮し、複数の事例を再構成して記事化しています。

固定資産税を払ってきたのに、役所からも見落とされてきたワケ

さっそくBさんの実家を調査したところ、確かに一部が増築されている箇所を発見しました。とはいえ、 10m2未満とわずか6畳程度の増築だったため、当時は建築確認申請が不要であり、役所等への手続きをしないまま放置されていたようです。

 

一般的に、未登記の増築部分の有無は「固定資産税評価証明書」に未登記部分の記載があるかどうかで把握できます。しかし今回のようにごく小さな増築の場合、増築部分が屋根などに隠れてしまい、役所の固定資産調査でも見落とされてしまうケースが少なくありません。つまり、「実際には増築されているものの、固定資産税上の評価(課税)はされていない」という状態だったのです。

 

原因が判明したため、Bさんから「早急に増築登記をお願いしたい」との依頼を受けました。

増築等をした場合は登記義務が発生する

建物を新築したときや取り壊したときと同様に、建物を増築したときも、法律上1ヵ月以内に「建物表題部変更登記(増築登記)」を行わなければなりません。もしこれを怠った場合は、10万円以下の過料が課されると定められています。

 

ただし、実際に過料が課されたという事例はほとんど耳にしないため、現時点では罰則の運用は実質的に形骸化しているというのが肌感覚です。

 

しかし、そのまま放置していると、今回のように「不動産の物理的な現状と登記簿の記載を一致させなければならない場面」で必ず足かせになります。増築から長い年月が経過していると、申請のための調査や必要書類の準備に膨大な時間と労力がかかり、最悪の場合には登記自体ができなくなるリスクもあります。

 

申請義務や罰則の有無にかかわらず、増築などをした際はなるべく早く登記申請を行うことを強くお勧めします。

 

金融機関だけが増築部分を指摘した理由

未登記部分がある建物の場合、あとから「その増築部分の権利(所有権など)を主張する第三者」が現れるリスクがあるからです。

 

金融機関は不動産を担保にお金を貸し出す立場であるため、そのような法的トラブルが生じると担保価値が毀損してしまいます。そのため、融資を実行する前には、必ずといっていいほど「不動産登記の記載事項」と「実際の不動産の状態」を完全に一致させることを求めてくるのです。

次ページ増築登記を申請するのに必要な書類の壁

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている及び事例を合わせて記載している部分があります。

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