「仕送りはもういらない」父から突然届いた連絡
健太さん(仮名・47歳)は、妻と中学生の娘の3人で暮らしています。地方の実家では、78歳の父・茂さん(仮名)が一人で生活していました。
母が亡くなったあと、健太さんは父に毎月4万円を仕送りしていました。茂さんの年金は月12万円ほど。持ち家で家賃はかからないものの、固定資産税や医療費、古くなった家の修繕費を考えると、十分とは思えなかったからです。
「無理しなくていいぞ」
茂さんは当初、そう言っていました。しかし健太さんは、「こっちは共働きだから大丈夫」と振り込みを続けました。
総務省『家計調査報告 2025年(令和7年)平均』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得が月約11万8,000円であるのに対し、消費支出は約14万8,000円です。平均では毎月およそ3万円の不足が生じており、年金だけでは支出を賄えない世帯もあります。
茂さんも、電話では「助かっているよ」と話していました。ところが仕送りを始めて3年ほどたったある日、短いLINEが届きます。
「仕送りはもういらない。自分たちのために使いなさい」
健太さんはすぐに電話をかけました。
「急にどうしたの。足りているの?」
「年金で何とかなる。お前のところも、これから教育費がかかるだろう」
声はいつもと変わりませんでした。何度聞いても「大丈夫だ」と繰り返すため、健太さんは翌月から振り込みを止めました。
それから数週間後、近所の人から連絡が入りました。
「お父さんが家の前で転んで、救急車で運ばれたみたい」
幸い骨折はありませんでしたが、茂さんは脱水症状を起こしており、しばらく入院することになりました。冷蔵庫の中には、わずかな総菜と水しか残っていなかったといいます。
「本当に、ちゃんと生活できていたのか……」
退院後の生活を整えるため、健太さんは実家の片づけを始めました。冷蔵庫を動かしたとき、その裏側の隙間から古い菓子箱が出てきました。
ふたを開けると、中には1万円札の束と複数の封筒が入っていました。封筒には、健太さんが送金した月が一つずつ書かれていました。
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