見方を変えたことで開けた「再就職への道」
転機になったのは、スーパーで一緒に働く年上の同僚との会話でした。
「正社員の仕事を探してるけど、面接で落ちちゃって」
智子さんが話すと、同僚は言いました。
「一社落ちただけで決めるのは早いよ。相談できるところに行ってみたら?」
勧められたのは、ハローワークの就職支援窓口でした。智子さんは最初、「仕事を紹介されるだけ」と思っていましたが、担当者は職歴や希望条件を細かく聞き、履歴書の書き方や面接での伝え方まで一緒に考えてくれました。
厚生労働省のマザーズハローワーク・マザーズコーナーでは、子育てと仕事の両立を希望する人に対し、担当者制による職業相談や求人情報の提供、応募書類や面接への助言などを行っています。ブランクへの不安を抱える人も支援対象とされています。
「退職後は何もしていません」と話す智子さんに、担当者は尋ねました。
「パート先では、どんな仕事をしていますか」
智子さんは、レジ業務だけでなく、売上表への入力、新人への説明、発注数の確認もしていると答えました。
「それも実務経験ですよ。以前の事務経験と、今の仕事で身につけたことを分けずに整理しましょう」
その言葉で、智子さんの見方は少し変わりました。
子育て中には、学校や地域の行事で日程を調整し、役割を割り振り、書類を作った経験もあります。家庭内の経験をそのまま職歴として扱うことはできませんが、段取りや対人調整の力を説明する材料にはなります。
智子さんは、職業訓練の短期講座でExcelや文書作成を学び直しました。いきなり高収入の正社員だけを狙うのではなく、残業が少なく、現在の経験を生かせる営業事務や一般事務に応募先を絞りました。
数社目の面接では、ブランクについてこう伝えました。
「出産を機に退職しましたが、現在はパート先で売上入力や発注、新人指導を担当しています。以前の営業事務経験と現在の実務を生かしながら、パソコン操作も学び直しています」
その会社から、3ヵ月の試用期間を経て正社員登用を前提とする採用通知が届きました。
フルタイム勤務になれば、家事の分担や子どもの予定も見直す必要があります。夫や子どもとも話し合い、夕食づくりや洗濯を家族で分担することにしました。
長期間のブランクがある場合、再就職は容易とは言えません。しかし、過去の職歴だけで自分の価値を判断する必要もありません。現在の仕事で担っている役割を整理し、必要なスキルを補い、支援機関を利用することで選択肢は広がります。
智子さんが踏み出せなかった最大の理由は、年齢やブランクそのものだけではなく、「自分にはもう通用するものがない」と決めつけていたことでした。再就職への第一歩は、求人に応募する前に、これまで積み重ねてきた経験を自分自身が見直すことなのかもしれません。
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