(※写真はイメージです/PIXTA)

「子どもには自分と同じ苦労をさせたくない」――そう願い、我が子の教育に熱を入れるのは、親として自然な愛情かもしれません。しかし、親が用意したレールが、必ずしも子どもの幸せに直結するとは限らないのが現実です。それどころか、気づかぬうちに我が子を追い詰め、家庭を崩壊させてしまうことも……。「大企業就職」という最高の結果を出したはずの家族に、一体何が起きたのか? 見ていきましょう。

大企業を1年で退職…息子の決意と本音

息子は就職を機に、会社の寮へ。ところが、それから1年ほどたったある日。実家に帰ってくると、佐川さんと妻の目をまっすぐ見据え、想定外の言葉を口にしました。

 

「会社、辞めたから。給料は下がるけど、来月から困窮家庭の子どもたちを支援するNPO法人に転職するんだ」

 

せっかく誰もが羨むエリート街道に滑り込んだというのに、なぜなのか。安定した地位も、高い給料も、すべて投げ出すという息子の決断が理解できず、佐川さんは絶句します。問い詰める父親に、息子はこれまで胸の奥底にしまい込んでいた本音を吐き出しました。

 

『いい大学に行かせるため』って、お金のことでいつもピリピリして、夫婦喧嘩ばかりしている二人を見るのが本当に苦痛だった。勉強ばかりの子ども時代も、ちっとも楽しくなかった。塾も、習い事も、進路も、全部父さんの言うとおりにしてきた。でも、もう解放してほしい。自分の人生を歩みたい――。

 

初めて聞いた、息子の本音でした。

 

「息子の言いたいことが、まったく理解できないわけではありません。ですが、私なりに身を粉にして精一杯やってあげたつもりでした。あの子にどれほどのお金と時間を捧げてきたか、それを本当に理解しているのかと、怒りとも悲しみともつかない感情が湧いてきました」

 

この日を境に、息子との間には決定的な溝が生まれました。さらに、長年佐川さんの教育方針に黙って従ってきた妻の態度も、冷ややかなものへと変わってしまったのです。

 

「息子のためになるからと言われて、私もいろんなことを我慢してきた。でも、私たちのやってきたことは間違っていたのね」

 

そう呟いた妻は、佐川さんと必要最低限の会話しか交わさなくなりました。

 

「どこで間違えたのかなと思います。自分のことを二の次にして、すべてを子どもの教育に捧げてきました。どう思われようと、息子の幸せを願っていたのは本当なんです。それなのに……」

 

次ページ子どもにかかる教育費と、その先の将来は直結しない

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