契約書が突きつけた現実
高齢者向け施設や居住系サービスは、介護や見守りを必要とする人の生活を支える重要な役割を担っています。一方で、有料老人ホームの費用やサービス内容は施設ごとに異なり、介護保険外のサービスは自己負担となることがあります。
総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円。平均で毎月約4.2万円の不足が生じています。賢一さん夫婦は平均より資産に余裕がありましたが、高額な施設費と追加費用が続けば、貯蓄の減り方は想定より速くなります。
子どもたちにも相談しました。長男は「契約書に書いてあるなら仕方ない」と言い、長女は「入居前にもっと確認すべきだったね」と言いました。その言葉に賢一さんは悔しさを覚えましたが、冷静になるにつれ、自分も費用の総額ばかりに目を向け、状態が変わった場合の条件を深く確認していなかったことに気づきました。
その後、家族は施設の担当者と改めて面談し、今後想定される費用、居室変更の条件、夫婦同室を続けられる可能性、退去時の返還金について一つずつ確認しました。すぐに退去することはせず、必要な支出と受け入れられない条件を整理したうえで、別施設への住み替えも選択肢に入れることにしました。
有料老人ホームは、安心を得るための有力な選択肢です。しかし、入居一時金や月額費用だけでなく、介護度が上がった場合の追加費用、居室変更、退去条件、返還金の扱いまで確認しなければ、入居後に大きな誤算が生じることがあります。老後最大の買い物だからこそ、「どこまで納得して契約できるか」を見極めることが大切なのです。
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