「そりゃないだろう…」社宅暮らし40年、金融資産2億円を築いた70代夫婦の誤算。〈入居金9,000万円の高級老人ホーム〉へ入所も、6年後に夫婦揃ってやつれたワケ【FPが解説】

「そりゃないだろう…」社宅暮らし40年、金融資産2億円を築いた70代夫婦の誤算。〈入居金9,000万円の高級老人ホーム〉へ入所も、6年後に夫婦揃ってやつれたワケ【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の住まいとして老人ホームを検討する際、多くの人が「手厚い介護」や「充実した設備」に目を向けます。しかし、どれほど資産に余裕があり、万全の準備をしたつもりでも、暮らしの土台が揺らぐことがあって……。本記事ではFPオフィスツクル代表の内田英子氏が、山崎さん夫婦の事例とともに、老人ホーム選びの注意点について解説します。※本記事の事例は複数の相談をもとに、プライバシー保護のため脚色を加えています。税務・法務等の個別判断は各専門家にご相談ください。

介護事業者の倒産は過去最多に

近年、介護事業者の倒産は増えています。東京商工リサーチ TSRデータインサイトによると、2025年の介護事業者、つまり「老人福祉・介護事業」の倒産は176件。前年より2.3%増え、2年連続で過去最多を更新しました。コロナ禍前の2019年は111件だったため、6年で約6割増えたことになります。

 

直近のデータでは、とくに件数が多いのは2024年度の基本報酬マイナス改定の影響を受けた訪問介護です。しかし、有料老人ホームも無関係ではありません。2025年の有料老人ホームの倒産は16件。前年からは2件減少したものの、依然として高い水準です。

 

老人ホームもまた、事業として運営されています。2025年の結果を見ると、「人手不足」倒産が全体の約16%を占め、件数は前年よりも45%増加しています。深刻な人手不足を背景に、人件費を上げざるを得ない圧力が高まるなか、食材費や光熱費、建物の維持管理費などの必要経費も上がり続けています。介護サービスに人手はかかせません。人材の確保が欠かせない事業であるからこそ、たとえ資金があっても経営を継続することができない難しさもあります。

 

つまり、老人ホーム選びで確認すべきなのは、居室の広さや食事、医療連携だけではありません。その施設を運営する会社が、将来にわたって安定して事業を続けられるのか。人手は確保できる環境にあるのか。そういった点も、老後の住まいを選ぶうえで欠かせない視点でしょう。

 

なお、入居時には、入居一時金の扱いについても慎重に確認しておきたいところです。

 

たとえば、山崎さん夫婦が入居時に支払ったのは約9,000万円でしたが、このお金は銀行預金のようにそのまま個人の名前と一緒に残っているお金ではありません。将来の家賃や共用部分の利用料に充てる前払金として、契約に基づいて少しずつ消化されていくお金です。施設や入居時の年齢によっても異なるものの、5年~10年程度で償却されるケースが多いようで、退去時に必ずしも払い戻しを受け取ることができるとは限りません。

 

山崎さん夫婦の場合は、契約書を確認すると、初期償却で20%、償却期間が13年と設定されていました。未償却部分を計算してみると、約3,600万円。すでに約6割近くのお金が消化されている計算です。

 

さらに、「計算上戻るはず」の未償却金がある場合でも、実際に戻るかどうかは約束されているわけではありません。仮に事業者が倒産した場合、入居一時金の未償却分については法令上の保全措置があります。ただし、保全されるのは未償却分の全額とは限らず、一般に上限は500万円です。

 

山崎さん夫婦のように計算上の未償却分が数千万円ある場合、保全される金額との差は大きくなります。未償却分が500万円を超える部分は倒産手続き上の一債権に過ぎず、回収できるとは限りません。一方、すでに償却が終わっていれば返還対象自体がなくゼロとなる可能性もあります。

 

説明を聞いた山崎さんは「そりゃないだろう……」とやつれた様子です。

 

 

 

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