時価との乖離は税務調査で否認…求められる「適正価格」での売却
マイカーを法人名義にする際、単純に名義を変更したり、デタラメな金額で売買したりすることは認められない点には注意が必要です。個人と法人間での取引は、客観的な「適正価格(時価)」で行うことが求められます。
税務調査で適正な時価であることを証明するためには、複数(2〜3社)の中古車買取業者から査定書を取得し、その査定額の平均値を算出することが有効です。
もし時価よりも著しく低い価格で会社に売却した場合、法人は時価との差額分を無償で得たとみなされ、「受贈益」として法人税の課税対象となります。無償での譲渡(贈与)を行った場合も同様に、時価相当額の全額が受贈益として課税されます。
逆に、買ったときよりも高く売れて利益が出た場合にも注意が必要です。原則として通勤用の車であれば非課税ですが、ベンツのGクラスやポルシェといったプレミアのついた高級車の場合、税務署から「趣味の車」と認定されるケースがあります。この場合、50万円の特別控除を差し引いた利益に対して個人の所得税が課せられます。
また、この取引は社長個人の利益と会社の利益が相反する「利益相反取引」に該当します。そのため、事前の株主総会などで承認を得て、議事録を作成し保管する法的な手続きが不可欠です。
保険料が数倍に…節税メリットが吹き飛ぶ「等級リセット」
名義変更にあたって見落とされがちなのが、「自動車保険(任意保険)」の取り扱いです。運輸支局で移転登録(名義変更)の手続きを行う前に、必ず保険会社に対して「個人のノンフリート等級が法人契約に引き継げるか」を確認する必要があります。
個人で長年無事故を続け、たとえば20等級の高い割引率を持っていたとしても、法人契約への引き継ぎを認めるかどうかのルールは保険会社によって大きく異なります。
もし引き継ぎが認められず、新規契約の6等級からのスタートとなってしまえば、保険料は何倍にも高騰し、節税メリットが完全に吹き飛んでしまう恐れがあります。
等級の引き継ぎができない場合は、「レンタル契約」をするのもひとつの手
万が一等級の引き継ぎができない場合は、名義を個人のままにしておき、社長と会社間で車の「賃貸借契約」を結ぶという代替案が存在します。会社が社長個人に毎月適正な賃料(使用料)を支払い、事業で使用するガソリン代や高速代を会社の経費とする方法です。
この場合、減価償却費や自動車税、保険料はあくまで所有者である個人の負担となるため節税効果は限定的ですが、保険の等級を守る手段としては有効です。
