(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親世代のなかには、自宅に現金をしまっている人も少なくありません。銀行に預けるより手元にある方が安心、いざというときにすぐ使いたい。理由はさまざまですが、本人しか場所を知らない現金は、死後に家族を戸惑わせることもあります。お金が残されていたこと自体より、その背景にあった思いが、遺族の胸を打つこともあります。

父が遺した現金に込められた思い

直人さんは最初、胸が詰まる思いで現金を見つめていました。しかしすぐに、相続手続きの現実にも向き合うことになります。自宅に保管されていた現金も、相続財産に含まれます。通帳に記録がないからといって、自由に扱ってよいものではありません。

 

家族が存在を知らなければ、申告漏れや相続人間のトラブルにつながるおそれがあります。

 

幸い、昭夫さんの相続人は直人さん一人でした。それでも、見つかった現金の金額や場所を記録し、通帳や保険、家の名義とあわせて整理する必要がありました。直人さんは、父が残した封筒を一つずつ確認しながら、もっと早くお金の話をしておけばよかったと感じたといいます。

 

直人さんは、父のメモを財布に入れました。現金は相続財産として整理したうえで、父の墓や実家の片づけ費用に充てることにしました。自分のために使うことも考えましたが、まずは父が安心して眠れるようにしたいと思ったのです。

 

タンス預金は、本人にとっては身近で安心できるお金かもしれません。しかし、保管場所や金額を家族が知らないままでは、死後に混乱を招くことがあります。現金を手元に置く場合でも、最低限、信頼できる家族に場所を伝えておくことは大切です。

 

それでも直人さんが見つけた現金は、単なる「隠し財産」ではありませんでした。限られた年金の中から少しずつ残し、いつか息子の力になれれば――。そんな父なりの不器用な思いもまた、封筒の中には静かに残されていたのです。

 

 

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