(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが結婚し、孫が生まれると、多くの親は新たな家族のつながりが広がったように感じます。孫の成長を見守り、娘や息子の暮らしを支えることに喜びを覚える人も少なくありません。しかし、親の善意が子ども世帯にとって負担になることもあります。距離感を見誤ると、老後の大切な家族関係を失ってしまう場合があります。

「娘のため」のつもりが…少しずつ積み重なった負担

正弘さん(仮名・74歳)と妻の恵子さん(仮名・72歳)は、夫婦で年金月20万円ほどを受け取りながら暮らしています。持ち家で住宅ローンはありませんが、固定資産税や医療費、家の修繕費を考えると、余裕のある家計ではありません。

 

二人の楽しみは、近くに住む一人娘の彩香さん(仮名・43歳)と、2人の孫に会うことでした。週末に孫を預かり、誕生日にはプレゼントを用意し、運動会や発表会にも顔を出す。恵子さんは「孫がいるから毎日が張り合いになる」とよく話していました。

 

彩香さん夫婦も、最初は両親の協力に感謝していました。共働きで忙しく、保育園の迎えや急な発熱のときに手を貸してもらえることは大きな支えだったからです。

 

「お母さんたちがいてくれて助かる」

 

そう言われるたび、恵子さんはうれしくなりました。ところが、孫の成長とともに、夫婦の関わり方は少しずつ変わっていきます。

 

恵子さんは、孫の食事や服装、習い事に口を出すようになりました。「その服、寒くない?」「そんなに習い事を詰め込んだらかわいそう」「ゲームばかりさせない方がいい」。どれも心配から出た言葉でしたが、彩香さんには自分の子育てを否定されているように聞こえていました。

 

正弘さんも、娘夫婦の家計に助言することが増えました。

 

「外食が多いんじゃないか」

「住宅ローンはもっと早く返した方がいい」

「子どもの教育費は大丈夫なのか」

 

娘の将来を思っての言葉でした。しかし、彩香さん夫婦にとっては、家庭の中に踏み込まれている感覚が強くなっていきました。

 

決定的だったのは、孫の進学をめぐる出来事でした。彩香さん夫婦は、上の子を私立中学の受験塾に通わせることを決めていました。ところが恵子さんは、「小学生からそんなに勉強させなくてもいいんじゃない」と何度も言いました。さらに、親戚の集まりでその話題を出し、「彩香は少し教育熱心すぎるのよ」と笑いながら話してしまったのです。

 

その場では彩香さんも笑っていました。しかし帰宅後、長いメッセージが届きました。

 

「もう限界です。しばらく会うのを控えたい。子育てに口を出されるたびに、自分が責められているようでつらかった」

 

恵子さんはスマートフォンを握ったまま固まりました。

 

「そんなつもりじゃなかったのに……」

 

何度もそうつぶやきましたが、すぐに返信する言葉は見つかりませんでした。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、可処分所得約22.2万円に対し、消費支出は約26.4万円で、平均では毎月約4.2万円の不足が生じています。正弘さん夫婦の年金月20万円はこの平均的な可処分所得を下回っており、金銭的にも大きな余裕があるわけではありません。それでも二人は、孫に会う時間や娘一家への手助けを、老後の支えのように感じていました。

 

その支えが突然失われたことは、夫婦にとって想像以上に大きな喪失でした。

 

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