(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者が現金を自宅に保管しているケースは珍しくありません。銀行に預けるより手元に置いた方が安心、急な支払いに備えたい。理由はさまざまです。しかしいわゆるタンス預金は、紛失や盗難、災害、相続時の混乱などのリスクがあります。家族が存在を知らないまま放置されると、思わぬ問題につながることもあります。

「銀行は信用できない」…父が自宅に現金を置き続けた理由

真理子さん(仮名・56歳)は、84歳の父・清さん(仮名)が一人で暮らす実家を定期的に訪ねていました。母は数年前に亡くなり、清さんの年金は月7万円ほど。若い頃は自営業をしていましたが、国民年金中心のため、年金額は多くありませんでした。

 

それでも清さんは、娘にお金の相談をすることを嫌がりました。

 

「ちゃんとやってるから心配するな」

 

そう言うばかりで、通帳や財布を見せることはありません。真理子さんも、父の自尊心を傷つけたくないと思い、深く踏み込まずにいました。

 

ただ、実家の様子には少しずつ違和感が出ていました。冷蔵庫には安い総菜が並び、古い家電を使い続けています。一方で、急に高額な現金払いをしている気配もありました。壊れた給湯器の交換費用をその場で支払ったり、屋根の修繕業者にまとまった金額を渡したりしていたのです。

 

「そんなお金、どこから出してるの?」

 

真理子さんが尋ねると、清さんは少し不機嫌そうに答えました。

 

「昔から少しずつ残しておいた金だ」

 

その言葉の意味を、真理子さんが本当に知ることになったのは、実家の片づけを手伝っていたときでした。

 

押し入れの奥から古い紙袋が出てきました。中には封筒がいくつも入っており、それぞれに現金が分けて入れられていました。さらに別の引き出しからも、新聞紙に包まれた札束が出てきます。

 

「父さん、どこに隠していたの?」

 

真理子さんが驚いて声を上げると、清さんは気まずそうに目をそらしました。

 

「銀行に預けておくのが嫌だったんだ。何かあったとき、すぐ使える方が安心だろう」

 

総額を確認すると、現金は約700万円ありました。清さんは年金月7万円で質素に暮らしながら、亡くなった母の保険金や自営業時代の蓄えの一部を少しずつ現金で保管していたのです。

 

真理子さんは、ほっとするどころか不安になりました。これだけの現金を、家族の誰も知らない場所に置いていた。もし火事や空き巣があったらどうなっていたのか。清さんが急に入院した場合、必要な支払いに使えるのか。考えるほど、怖くなっていきました。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得約11.8万円に対し、消費支出は約14.8万円で、平均では毎月約3万円の不足が生じています。清さんの年金月7万円はこの水準を大きく下回っており、現金の蓄えが生活を支えていた面は確かにありました。しかし、その保管方法には大きなリスクがあったのです。

 

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