(※写真はイメージです/PIXTA)

親と同居する独身の子どもは、親の生活を支えやすい反面、距離が近すぎることで知らず知らずのうちに負担を抱え込んでしまうことがあります。親を大切に思う気持ちがあっても、自分の生活や将来を後回しにし続ければ、いずれ限界が訪れます。親子であっても、無理のない距離を取り直すことが必要になる場合があります。

「一緒にいるのが親孝行」だと思って…49歳娘の日々

美紀さん(仮名・49歳)は、都内の企業で働く会社員です。月収は手取りで38万円ほど。結婚はしておらず、76歳の母・洋子さん(仮名)と実家で二人暮らしを続けてきました。

 

父は8年前に亡くなっています。洋子さんの年金は月12万円ほどで、持ち家のため家賃はかかりませんが、固定資産税や医療費、家の修繕費を考えると、母一人の収入だけで余裕のある暮らしができるわけではありません。美紀さんは毎月生活費を入れ、買い物や役所の手続き、通院の付き添いも担っていました。

 

「お母さんを一人にするのは心配だから」

 

そう思って、同居を続けてきました。母との関係が悪かったわけではありません。休日には一緒に買い物へ行き、夕食を囲みながらテレビを見る。周囲からも「仲がいい親子ね」と言われることが多く、美紀さん自身も、それを親孝行だと思っていました。

 

しかし40代後半になり、少しずつ息苦しさを覚えるようになります。仕事で遅くなると、母から「今日は何時に帰るの?」と何度も連絡が入ります。友人と食事に行く予定を伝えると、「いいわね、私は一人でご飯か」と寂しそうに言われる。悪気のない言葉だと分かっていても、美紀さんは外出のたびに後ろめたさを感じるようになりました。

 

ある金曜日、同僚から週末の旅行に誘われました。美紀さんは一度は行くつもりで予定を空けましたが、母が数日前から膝の痛みを訴えたことで、結局断ることにしました。

 

「また今度にするね」

 

電話を切ったあと、美紀さんは自分でも驚くほど強い疲れを感じました。母のことが大切だからこそ、放っておけない。けれど、自分の楽しみや人間関係が少しずつ狭くなっていく感覚もありました。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、令和7年時点で65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は男性18.3%、女性25.4%と推計されています。親が一人になることへの不安は、子ども世代にとって現実的な問題です。一方で、親を心配するあまり、子ども自身の生活が過度に制限されてしまうケースもあります。

 

美紀さんの心が大きく揺れたのは、会社の後輩から何気なく言われた一言でした。

 

「美紀さんって、休みの日もずっとお母さん優先なんですね」

 

責められたわけではありません。それでもその言葉を聞いたとき、真紀さんは初めて、自分の時間や気持ちを後回しにしてまで母を優先することが当たり前になっていたと気づいたのです。

 

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