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申告件数は減少、税額は大幅増加という異例の構図
「令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」によると、贈与税全体では、申告人員47万人(▲1.2%)、納税人員32万人(▲2.8%)といずれも前年を下回った。
一方で申告納税額は5,038億円と28.0%増加した。課税方式別に見ると、暦年課税は申告人員39万人(▲1.3%)・納税額4,215億円(+28.7%)、相続時精算課税は申告人員8万人(▲0.8%)・納税額823億円(+24.6%)と、両制度とも同じ方向の動きを示した。
結果として、申告1件あたりの税額は明確に上昇しており、少数の申告でより大きな課税が発生する構造が強まっているとみられる。
税額増加の背景にある複数の要因
なぜ申告件数が減少する一方で税額が増加しているのか。統計から直接的な因果関係を特定することはできないが、いくつかの要因が重なった可能性がある。
第一に、資産価格の上昇である。株式や不動産といった評価対象資産の価格上昇により、同じ規模の贈与でも評価額が膨らみ、結果として課税額が押し上げられた可能性がある。
第二に、贈与の“単位あたり規模”の拡大である。件数が減少する一方で、実際に行われる贈与がより大口化していれば、税額増加は自然な帰結となる。
第三に、制度改正の影響だ。相続開始前の贈与加算期間が3年から7年へ延長されたことで、短期的な分散贈与のインセンティブは低下し、中長期的な資産移転や大口贈与に行動がシフトした可能性がある。
ただし、国税庁の統計には財産種類別や資産規模別の詳細が含まれていないため、いずれの要因がどの程度寄与したかを厳密に特定することはできない。
相続時精算課税の使い勝手が改善
制度面では、相続時精算課税に年間110万円の基礎控除が導入されたことが大きな変化だ。これにより少額の贈与であれば申告不要となるケースが増え、制度の使い勝手が改善した。一方で、暦年課税の贈与加算期間延長は、短期間での節税行動を抑制する効果を持つ。
相続時精算課税の申告人員も前年比で減少しており、基礎控除の恩恵で申告不要となった人が一定数いると推察される。ただし、制度改正が申告行動全体に与えた影響の全容を数値で裏付けることは、現在公開されているデータの範囲では難しいようだ。
“資産移転の選別化”は進むのか
今回のデータが示唆するのは、贈与の総量そのものの変化というよりも、資産移転の“中身の変化”である可能性だ。
今後、資産価格の動向や制度改正の影響がさらに浸透することで、贈与はより少数・高額・計画的なものへと収斂していくのか、それとも一時的な現象にとどまるのかは明らかではない。
少なくとも現時点では、贈与税の統計は「件数の減少」と「税額の増加」という逆方向の動きを示しており、資産移転の構造が静かに変化しつつある可能性は否定できない。
※ 数値は国税庁「令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」に基づく。
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