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トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か――税制が映し出すアメリカの真実
奥村眞吾(著)+ゴールドオンライン(編集)
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会計検査院は何を問題視したのか
きっかけとなったのは、2024年11月に公表された会計検査院の令和5年度決算検査報告だ。会計検査院は、非上場株式(取引相場のない株式)の評価制度について、評価方式によって評価額に大きな差が生じていることや、一部の算定方法が現在の経済環境と必ずしも整合していない可能性を指摘した。
これを受けて国税庁は2026年4月、「取引相場のない株式の評価の在り方に関する有識者会議」を設置し、制度の公平性や合理性を検証する議論を開始した。
6月4日に開かれた第3回会議では、日本商工会議所(日商)が中小企業の立場から意見を表明し、事業承継への影響にも十分配慮すべきだと訴えた。
会計検査院が着目したのは、非上場株評価の仕組みそのものだった。
現在の相続税評価では、会社規模などに応じて「類似業種比準価額方式」や「純資産価額方式」などが用いられている。
会計検査院によると、類似業種比準価額方式による評価額の中央値は純資産価額方式による評価額の中央値の27.2%にとどまっており、評価方式によって大きな差が生じている実態が確認された。
また、少数株主の評価に用いられる配当還元方式についても、還元率10%が昭和39年の財産評価基本通達制定時から見直されていないことを指摘。現在の低金利環境や投資環境を踏まえれば、その妥当性について検討の余地があるとした。
もっとも、会計検査院は評価額の引き下げや特定の評価方式の採用を求めたわけではない。報告書では、評価制度の公平性や社会経済情勢との整合性を確保する観点から、制度の在り方について様々な視点から検討する必要があると問題提起している。
「利益を出すほど株価が上がる」という優良企業の悩み
今回の議論が中小企業経営者の関心を集める理由は、自社株評価が事業承継に直結するためだ。
非上場株式の評価額は、企業の利益や純資産を基礎として算定される。そのため、長年にわたって利益を積み上げてきた企業ほど株価が高くなる傾向がある。
企業価値の向上は本来歓迎されるべきことだ。しかし事業承継の場面では、自社株評価額の上昇が相続税や贈与税の負担増につながる。
中小企業経営者の間では以前から、「会社を成長させた結果として承継コストも上昇する」というジレンマが指摘されてきた。
6月4日の有識者会議で日商が事業承継への配慮を求めた背景にも、こうした現場の課題があるからだろう。
事業承継税制だけでは解決できない現実
現在は事業承継税制によって、自社株に係る相続税や贈与税の納税猶予制度が設けられている。
ただし、制度利用には一定の要件があり、承継後も継続的な管理が必要となる。将来的なM&Aや組織再編を検討している企業にとっては、制度利用を慎重に判断するケースも少なくない。
そのため中小企業関係者からは、「納税猶予制度だけでなく、自社株評価そのものの在り方を見直すべきではないか」との声も上がっているという。
今回の見直し議論は、事業承継税制そのものを変更するものではない。しかし、自社株評価の考え方が変われば、事業承継対策全体にも影響を及ぼす可能性がある。
M&A市場の拡大で浮上した新たな課題
後継者不足を背景に、中小企業M&Aが活発化しているが、税務上の株価と実際のM&A価格は必ずしも一致しない。
税務評価は利益や純資産を基礎に算定される一方、M&Aでは将来の収益力や成長性、シナジー効果なども考慮されるためだ。それによって税務上の評価額を大きく上回る価格で売買される企業もあれば、反対に税務評価額ほどの買い手が見つからない企業も存在する。
会計検査院の問題提起は、相続税評価の公平性だけでなく、「企業価値をどのように評価するべきか」というより根本的な議論にもつながっている。
問われる「公平性」と「承継支援」の両立
もっとも、見直し議論は単純ではない。仮に評価方法の見直しによって評価額が変動すれば、相続税負担や税収にも影響を及ぼす可能性がある。また、見直しの内容によってはオーナー企業や資産家に有利な制度改正との批判が生じる可能性もある。
そのため国税庁の有識者会議では、課税の公平性を維持しながら、中小企業の事業承継や地域経済への影響をどのように考慮するかが大きな論点となる。
会計検査院による問題提起から約1年半。ようやく始まった本格的な見直し議論は、単なる株価算定ルールの話にとどまらない。事業承継の促進と課税の公平性という二つの課題をどう両立させるのか。その結論は、日本の中小企業政策や税務実務にも少なからぬ影響を与えることになりそうだ。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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