「助けを求めること」が怖くなった女性の本音
役所からの帰り道、和代さんは駅前のベンチに座り込みました。
「自分が情けなくなってしまったんです」
もちろん、担当者に悪意があったわけではありません。生活保護制度では、資産や収入、働く能力、扶養の可能性などを確認したうえで支給の可否が判断されます。
厚生労働省によると、生活保護は「利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用すること」が前提とされています。そのため、就労可能と判断される場合には、まず就労を求められるケースがあります。
ただ、和代さんにとっては、その一言が重く刺さりました。
「73歳で、どこが雇ってくれるんだろうって思いました」
実際にその後、清掃や品出しの仕事にも応募しました。しかし年齢を理由に断られることも多く、採用されても短時間勤務で収入はわずかでした。
一方で、医療費や生活費は減りません。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、高齢者の単身世帯は今後も増加するとされています。家族に頼れず、限られた年金だけで暮らす高齢者は、決して珍しい存在ではありません。
和代さんはその後、地域包括支援センターにも相談しました。すると担当者は生活保護だけでなく、
家賃負担を抑えられる住まいの情報
社会福祉協議会の貸付制度
高齢者向けの見守り支援
医療費負担の軽減制度
なども教えてくれました。
「“まだ働けますよね”と言われた日は、もう相談なんてしたくないと思いました。でも、一人で抱えていたら、本当に壊れていたかもしれません」
現在、和代さんは小さな仕事を続けながら、自治体の支援制度も利用しています。
生活は楽ではありません。それでも、「誰にも頼れない」と思い込んでいた頃よりは、少しだけ気持ちが落ち着いたといいます。
老後の生活苦は、突然始まるわけではありません。節約、我慢、遠慮――そうした積み重ねの先で、初めて「助けてください」と口にする人もいます。
しかし、支援が必要なのは限界を迎えた後ではなく、その少し前なのかもしれません。
一人で耐え続けることではなく、誰かにつながること。その一歩が、暮らしを立て直すきっかけになることもあるのです。
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