年金制度、知らずに後悔しないために
田中さんはこの一件をきっかけに、年金は制度のルールに沿って決まるものだと痛感したそうです。
制度である以上、どこかに線引きがあり、その線を越えると結果が変わることがあります。そして、制度を上手に使うためには、ルールをきちんと知っておく必要があるのです。
「会社のことなら、取引先も市場も冷静に見てきたつもりだった。でも、自分の家計には同じ目を向けてこなかった。もっと早くに知っておけば、たとえ結果は同じでも、受け止め方は違ったかもしれない」と、田中さんは振り返ります。
こうした後悔は、田中さんに限った話ではありません。筆者がフィーベースのアドバイザーとしてご相談をお受けするなかで感じるのは、仕事や会社経営には熱心に取り組んできた方ほど、ご自身の家計や晩年の暮らしについては、案外受け身になっていることがあるということです。
家計もまた、外部環境(制度や経済)と内部資源(働き方や家族の状況)の両方を見ながら設計していく、一つの経営といえます。年金は、そのなかの大切な資源の一つです。
65歳以降の働き方を考えるときは、「年金額だけを最大化しようとしないこと」をぜひ心に留めておいてください。役員報酬をどう受け取るかは、年金だけでなく、会社の資金繰り、社会保険料や税金、生活費、後継者との関係、引退時期にも影響します。年金の受取額だけを見て判断すると、かえって暮らし全体や会社経営とのバランスを崩してしまう可能性もあります。
だからこそ、年金だけを切り離して考えることはできません。働き方、家族の状況、会社との関わり方、生活費の見通しと合わせて、ライフプランのなかにどのように組み込むのかを考える必要があります。
年金に振り回されるのではなく、暮らしの設計図のなかで年金を「使う」。それが、納得感のある老後への第一歩といえるでしょう。
〈参考〉
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html
日本年金機構 在職老齢年金制度が改正されました
内田 英子
FPオフィスツクル 代表
ファイナンシャルプランナー
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