(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金は、多くの人にとって大切な安心材料です。年金だけで暮らせるのか、医療費や介護費は足りるのか。そうした不安があるからこそ、貯蓄を守ろうとするのは自然なことです。しかし、将来への備えを重視しすぎるあまり、元気なうちに使えたはずのお金や時間を遠ざけてしまうこともあります。

「お金は残った。でも、思い出が少ない」…夫婦の静かな後悔

夫婦が後悔しているのは、節約そのものではありません。

 

「無駄遣いをしたかったわけではないんです。ただ、何でも我慢に変えてしまった」

 

千恵子さんはそう話します。

 

子どもや孫から旅行に誘われても、「お金がかかるから」と断ることが多くありました。友人との会食も、会費を見てためらうことがありました。

 

「迷惑をかけないために貯めていたはずなのに、家族と過ごす時間まで減らしていたのかもしれません」

 

老後資金を守りたいという気持ちは、多くの人に共通するものです。ただ、時間はお金と同じようには残せません。正敏さんは、最近になってそのことを強く感じるようになりました。

 

「通帳にはお金が残っています。でも、妻と元気に出かけられる時間は、前より少なくなっていました」

 

現在、夫婦はお金の使い方を少しずつ変えています。月に一度は外食をする。近場の温泉に一泊する。孫の誕生日には、現金を送るだけではなく、一緒に食事をする。

 

大きな贅沢ではありません。それでも、生活には少しずつ色が戻ってきたといいます。

 

「まだ使うのは怖いです。でも、“使わなかった後悔”もあるんだと分かりました」

 

老後資金は、将来の不安に備えるためのお金です。しかし、それは同時に、今ある時間をどう生きるかを支えるお金でもあります。

 

資産4,000万円という数字は、夫婦に安心を与えてきました。一方で、その数字を守ることばかりに気を取られ、楽しめたはずの日々を遠ざけていたのも事実でした。

 

「こんなに残して、何になるんだろう」

 

夫婦の言葉には、元気なうちに大切な時間を使い切れなかった、静かな悔いがにじんでいました。

 

 

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