「お金は残った。でも、思い出が少ない」…夫婦の静かな後悔
夫婦が後悔しているのは、節約そのものではありません。
「無駄遣いをしたかったわけではないんです。ただ、何でも我慢に変えてしまった」
千恵子さんはそう話します。
子どもや孫から旅行に誘われても、「お金がかかるから」と断ることが多くありました。友人との会食も、会費を見てためらうことがありました。
「迷惑をかけないために貯めていたはずなのに、家族と過ごす時間まで減らしていたのかもしれません」
老後資金を守りたいという気持ちは、多くの人に共通するものです。ただ、時間はお金と同じようには残せません。正敏さんは、最近になってそのことを強く感じるようになりました。
「通帳にはお金が残っています。でも、妻と元気に出かけられる時間は、前より少なくなっていました」
現在、夫婦はお金の使い方を少しずつ変えています。月に一度は外食をする。近場の温泉に一泊する。孫の誕生日には、現金を送るだけではなく、一緒に食事をする。
大きな贅沢ではありません。それでも、生活には少しずつ色が戻ってきたといいます。
「まだ使うのは怖いです。でも、“使わなかった後悔”もあるんだと分かりました」
老後資金は、将来の不安に備えるためのお金です。しかし、それは同時に、今ある時間をどう生きるかを支えるお金でもあります。
資産4,000万円という数字は、夫婦に安心を与えてきました。一方で、その数字を守ることばかりに気を取られ、楽しめたはずの日々を遠ざけていたのも事実でした。
「こんなに残して、何になるんだろう」
夫婦の言葉には、元気なうちに大切な時間を使い切れなかった、静かな悔いがにじんでいました。
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