どれだけ優秀でも候補に入らなければ無意味…消費者が無意識に選ぶ「想起のからくり」

どれだけ優秀でも候補に入らなければ無意味…消費者が無意識に選ぶ「想起のからくり」

どれほど魅力的な商品を作っても選ばれない、競合との価格競争から抜け出せない……それは、消費者の購買の瞬間に商品が「思い出されていない」からかもしれません。本記事では、松本淳氏の著書『ヒット商品を生み出す!認識のからくり』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、ポカリスエットやグラノーラの事例から紐解く、消費者がモノを思い出す引き金「CEP」の仕組みと、競合環境を一変させる想起のフレームワークについて解説します。

認識転換→CEP→Evoked Set→購買

CEPは、消費者が「○○なときに△△を思い出す」という無意識のスイッチでした。そして、このスイッチが押されたときに立ち上がるのが Evoked Set(想起集合)です。これは、消費者がある状況で実際に検討する候補商品の集合を意味します。


「のどが渇いた」と感じた瞬間、私たちの頭の中には、水やお茶、炭酸飲料、コーヒー、スポーツドリンクといった選択肢が自然に浮かびます。これらがEvoked Setです。


重要なのは、この集合に入らない商品は、どれほど優れていても検討対象にならないということです。つまり、思い出されないブランドは「存在しない」のと同じなのです。
同じ商品でも、発動するCEPが違えば、入るEvoked Setも変化します。ポカリスエットを例に挙げると次のようになります。

 

CEP「運動後の水分補給」
Evoked Set: ポカリスエット、アクエリアス、ヴァーム、ミネラルウォーターなど

CEP「お風呂上がりの水分補給」

Evoked Set:牛乳、コーヒー牛乳、冷たい水、ポカリスエットなど

CEP「風邪のときの水分補給」

Evoked Set:白湯、お茶、水、ポカリスエットなど

 

このように、CEPが変われば、競合構造もまったく変わります。したがって、どのCEPで自社商品を想起させるのかを設計することが、ブランド戦略の重要なカギになってきます。

このCEPには時間、感情、場所、目的など、さまざまなタイプがあります。新しいCEPを発見するためには、「6W1H」という視点から体系的に考えることが有効です。これは自社商品の新しいCEPを見つけるための、実践的な問いかけのフレームワークと言い換えることもできると思います。

 

When(いつ):朝起きたとき/昼食後/寝る前

Where(どこで):家で/職場で/外出先で

While(何をしながら):テレビを見ながら/通勤しながら/料理をしながら

With What(何と一緒に):ヨーグルトと/パンと/サラダと

Why(なぜ):健康のため/美容のため/疲労回復のため

How feeling(どんな気持ちで):疲れて/リラックスして/罪悪感を抱かずに

With for Whom(誰のために):自分のため/家族のため/大切な人のため

 

これらの視点を自社商品に当てはめて考えることで、これまで気づかなかった新しいCEPを見つけることができます。また、複数を組み合わせることで、一つの商品から無数のCEPが生まれ、想起される機会を飛躍的に増やすことができます。


例えば、「夜(When)」「自分へのご褒美に(Why/How feeling)」「家で(Where)」という要素を組み合わせれば、「夜のご褒美スイーツ」という新たなCEPが立ち上がります。すると、同じ商品でも競合の顔ぶれが一気に変わり、まったく新しい市場が開かれるのです。

 

グラノーラブランドは、実はこのCEPとEvoked Setの設計により市場を拡大できた例です。


もともとシリアル商品の主なCEPは、「朝食を簡単に済ませたいとき」や「子どもに栄養バランスのいい朝食を食べさせたいとき」に限られていました。その結果、Evoked Setも「コーンフレーク」「グラノーラ」といった限られた候補にとどまっていたのです。私はここに新しいCEPを見いだしました。

 

第1は「ヨーグルトをもっとおいしくしたいとき」です。これまでこのCEPでは、フルーツやハチミツ、きな粉、ジャムなどが候補でした。そこに私が担当したグラノーラブランドを「ヨーグルトをもっとおいしくする相棒、友達」として位置づけたことで、新しい Evoked Setに入れることができました。


第2は「義務的で、退屈な朝食を楽しい時間にしたいとき」です。このCEPでは、パンケーキやフレンチトーストなどが代表的でしたが、グラノーラがここにも想起されるようになったのです。


この結果、私が支援したグラノーラブランドは「シリアル市場」という枠を超え、「ヨーグルトのお友達」「第三の朝食」など複数のCEPで想起されるブランドへと進化できました。つまり、一つの商品でも、複数のCEPに関連づけることで、まったく異なる Evoked Set に入り込むことができるのです。

 

 

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※本連載は、松本淳氏の著書『ヒット商品を生み出す! 認識のからくり』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、解説します。

ヒット商品を生み出す! 認識のからくり

ヒット商品を生み出す! 認識のからくり

松本 淳

幻冬舎メディアコンサルティング

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