認識転換→CEP→Evoked Set→購買
CEPは、消費者が「○○なときに△△を思い出す」という無意識のスイッチでした。そして、このスイッチが押されたときに立ち上がるのが Evoked Set(想起集合)です。これは、消費者がある状況で実際に検討する候補商品の集合を意味します。
「のどが渇いた」と感じた瞬間、私たちの頭の中には、水やお茶、炭酸飲料、コーヒー、スポーツドリンクといった選択肢が自然に浮かびます。これらがEvoked Setです。
重要なのは、この集合に入らない商品は、どれほど優れていても検討対象にならないということです。つまり、思い出されないブランドは「存在しない」のと同じなのです。
同じ商品でも、発動するCEPが違えば、入るEvoked Setも変化します。ポカリスエットを例に挙げると次のようになります。
CEP「運動後の水分補給」
Evoked Set: ポカリスエット、アクエリアス、ヴァーム、ミネラルウォーターなど
CEP「お風呂上がりの水分補給」
Evoked Set:牛乳、コーヒー牛乳、冷たい水、ポカリスエットなど
CEP「風邪のときの水分補給」
Evoked Set:白湯、お茶、水、ポカリスエットなど
このように、CEPが変われば、競合構造もまったく変わります。したがって、どのCEPで自社商品を想起させるのかを設計することが、ブランド戦略の重要なカギになってきます。
このCEPには時間、感情、場所、目的など、さまざまなタイプがあります。新しいCEPを発見するためには、「6W1H」という視点から体系的に考えることが有効です。これは自社商品の新しいCEPを見つけるための、実践的な問いかけのフレームワークと言い換えることもできると思います。
When(いつ):朝起きたとき/昼食後/寝る前
Where(どこで):家で/職場で/外出先で
While(何をしながら):テレビを見ながら/通勤しながら/料理をしながら
With What(何と一緒に):ヨーグルトと/パンと/サラダと
Why(なぜ):健康のため/美容のため/疲労回復のため
How feeling(どんな気持ちで):疲れて/リラックスして/罪悪感を抱かずに
With for Whom(誰のために):自分のため/家族のため/大切な人のため
これらの視点を自社商品に当てはめて考えることで、これまで気づかなかった新しいCEPを見つけることができます。また、複数を組み合わせることで、一つの商品から無数のCEPが生まれ、想起される機会を飛躍的に増やすことができます。
例えば、「夜(When)」「自分へのご褒美に(Why/How feeling)」「家で(Where)」という要素を組み合わせれば、「夜のご褒美スイーツ」という新たなCEPが立ち上がります。すると、同じ商品でも競合の顔ぶれが一気に変わり、まったく新しい市場が開かれるのです。
グラノーラブランドは、実はこのCEPとEvoked Setの設計により市場を拡大できた例です。
もともとシリアル商品の主なCEPは、「朝食を簡単に済ませたいとき」や「子どもに栄養バランスのいい朝食を食べさせたいとき」に限られていました。その結果、Evoked Setも「コーンフレーク」「グラノーラ」といった限られた候補にとどまっていたのです。私はここに新しいCEPを見いだしました。
第1は「ヨーグルトをもっとおいしくしたいとき」です。これまでこのCEPでは、フルーツやハチミツ、きな粉、ジャムなどが候補でした。そこに私が担当したグラノーラブランドを「ヨーグルトをもっとおいしくする相棒、友達」として位置づけたことで、新しい Evoked Setに入れることができました。
第2は「義務的で、退屈な朝食を楽しい時間にしたいとき」です。このCEPでは、パンケーキやフレンチトーストなどが代表的でしたが、グラノーラがここにも想起されるようになったのです。
この結果、私が支援したグラノーラブランドは「シリアル市場」という枠を超え、「ヨーグルトのお友達」「第三の朝食」など複数のCEPで想起されるブランドへと進化できました。つまり、一つの商品でも、複数のCEPに関連づけることで、まったく異なる Evoked Set に入り込むことができるのです。
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