売れ残りが大ヒットに!「脇役商品」の認識を変えて市場を独占するマーケティングの4要素

売れ残りが大ヒットに!「脇役商品」の認識を変えて市場を独占するマーケティングの4要素

かつては事業撤退の検討対象になるほど伸び悩んでいたグラノーラが、なぜ年間売上300億円のシリアル食品No.1ブランドへと大化けできたのでしょうか? その理由は、商品の中身を一切変えずに消費者の「見方」を塗り替えたことにあります。本記事では、松本淳氏の著書『ヒット商品を生み出す!認識のからくり』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、脇役だったグラノーラを朝食の主役に変えた事例や、特長のない普通の果物を「スーパーフルーツ」へと格上げさせたキウイフルーツの事例を通し、コストをかけずに劇的なヒットを生み出す「認識転換」の具体策を解説します。

「手抜き朝食」から「素敵な朝食のパートナー」へ

グラノーラブランドの事例は、カテゴリー全体にまとわりついていたネガティブなイメージを刷新し、新しいカテゴリーに結びつけることで売上を伸ばした典型例です。

 

いまやシリアル食品No.1ブランドとして確固たるポジションを築いているグラノーラブランドも、かつては事業撤退の検討対象になるほど伸び悩んでいました。

 

発売から20年以上が経過して売上は頭打ちで、「シリアル食品」というカテゴリーそのものに対する評価も、「手抜き朝食の代表」「あまりおいしくない」といった否定的なものが中心でした。喫食経験は全体の1割程度にとどまり、「ご飯」「パン」と朝食の主役を争ってはいるものの、生活者のなかではあくまで脇役にすぎなかったのです。

 

そうした状況のなかで、顧客の経営陣からは「3年で売上を約3倍の100億円に伸ばす」というチャレンジングな目標が課されました。当時のシリアル市場規模は200億円程度ですから、従来どおり「シリアルカテゴリーのなかでシェアを広げる」発想では、50%シェアという非現実的な数字を目指すことになります。

 

ここで私たちは、競合シリアルとのパイの奪い合いではなく、グラノーラそのものの認識を変え、「そもそも別の土俵で戦える存在にできないか」という発想に切り替えました。

 

最初に行ったのは、朝食シーン全体の見直しです。シリアル単体で「ご飯」や「パン」と主役争いをするのではなく、むしろ一緒に食卓に並ぶ「お友達」はいないか。そう考えて朝食の食卓を丁寧に観察すると、「ヨーグルト」「玉子料理」「パンケーキ」といった、グラノーラと組み合わせる余地のあるメニューが浮かび上がってきました。

 

私たちはそれぞれとの食べ合わせを想定したレシピや訴求をつくり、PRによるメディア露出や店頭試食での反応を通じて検証を重ねました。その結果、最終的に「相棒」として残ったのがプレーンヨーグルトでした。ヨーグルトにグラノーラの噛む食感と甘みが加わることで、ユーザーから「味も満足感も一気に変わる」という高い評価を得られたのです。

ここには、シリアル食品に対する「手抜き」「おいしくない」といった認識を、「ヨーグルトをおいしくする一手間」というポジティブな驚きに転換する狙いがありました。

 

「シリアル単体の主役」から、「いつものヨーグルトを格上げするパートナー」へ。これが認識転換の出発点となる驚きの設計でした。しかも、当時のヨーグルト市場はシリアル市場の約20倍の規模があり、朝食の出現頻度も圧倒的に高い状況でした。

 

「ご飯派」の家庭にも「パン派」の家庭にも並びうるヨーグルトに寄り添うことで、グラノーラは一気に新しいCEPに紐づく存在へと位置づけ直されたのです。

 

ただし、「ヨーグルトと一緒に食べるとおいしい」というだけでは、シリアル食品全体にまとわりついたネガティブな認識を脱ぎ捨てるには不十分でした。そこで重要になったのが、「象徴」の設計です。

 

当時、海外の素敵な朝食を紹介するライフスタイル情報が雑誌やSNSで注目を集めていました。私たちはそのトレンドに着目し、女性タレントやモデルが海外で体験した朝食を日本で再現する際に、「自宅でもグラノーラを朝食に取り入れている」という事実を象徴として前面に押し出しました。「憧れの人が、海外で出合った素敵な朝食を自分の暮らしにも取り入れている」。その姿は、シリアル=手抜きというイメージを、「素敵な人が選ぶ朝の習慣」へと塗り替える強力なストーリーになりました。

 

PRの場では「女性タレントやモデルが実践している素敵な朝食」としてグラノーラを紹介し、店頭では「ヨーグルトのお友達」という訴求で、商品そのものよりも楽しいとか前向きな朝食のシーンを前面に打ち出しました。これにより、「シリアルはなんとなくネガティブ」という認識から、「ヨーグルトをおいしくしてくれる、ちょっと特別でおしゃれな朝食パートナー」という新しい認識への後押しができたのです。象徴となる人の存在が、グラノーラの新しい価値を具体的な生活イメージとして可視化してくれたといえます。

 

次に重要だったのは、「現象」の設計です。ヨーグルトとの組み合わせ提案が広がるにつれて、「グラノーラ×ヨーグルト」の食べ方はSNSでも共有されるようになり、雑誌やテレビでの紹介も増えていきました。食べる人が増え、売上が伸びること自体が、「今、グラノーラを朝食に取り入れる人が増えている」という社会的証明となっていきました。

 

「素敵な人が実践している」という象徴に、「売れている」「みんなが買っている」という現象が重なることで、「自分も試してみていい」「グラノーラを朝食に取り入れるのは、時代に合った選択だ」という空気が生まれていったのです。

 

最後に、「納得」の部分では、ヨーグルトユーザーにとっての具体的なメリットを丁寧に言語化しました。「噛みごたえが加わって満足感が増す」「フルーツや穀物が一度に摂れる」「忙しい朝でも、簡単に栄養バランスを整えられる」といった理由づけです。

 

これらは、単なるイメージ訴求ではなく、「なぜ自分がそれを選ぶのか」を生活者自身が自分の言葉で説明しやすい納得の材料になりました。義務的で少し退屈だった朝食時間が、「ヨーグルトとグラノーラで、素敵で前向きな朝食時間」に変わっていく。こうした感覚が、行動の定着を後押ししていきました。

 

その結果、このグラノーラブランドは「手抜き朝食の代表」と見なされていたシリアルカテゴリーから、「ヨーグルトのお友達」「素敵な朝の習慣」といった複数の文脈で想起されるブランドへと進化しました。

 

驚き(ヨーグルトとの新しい組み合わせ)、象徴(素敵な人の素敵な朝食)、現象(みんなが取り入れている)、納得(ヨーグルトユーザーにとっての具体的なメリット)の4要素が連動したことで、シリアル市場の枠を超えて、新たなCEPとEvoked Setを切り拓く認識転換になったのです。

 

グラノーラブランドの認識転換の事例
グラノーラブランドの認識転換の事例

 

 

 

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※本連載は、松本淳氏の著書『ヒット商品を生み出す! 認識のからくり』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、解説します。

ヒット商品を生み出す! 認識のからくり

ヒット商品を生み出す! 認識のからくり

松本 淳

幻冬舎メディアコンサルティング

消費者の「認識」を変えることが “売れる”“選ばれる”商品をつくるカギ 驚き 象徴 現象 納得  4つの要素を駆使して 商品やブランドの市場価値を高める! 多くの企業が「認知度を上げれば売れる」と信じ、商品や…

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